夏の風が心地良く感じるくらい、
僕の心は貧しいのかもしれない。





Cynical







「上がれ!」




夏の日差しが容赦なく照りつける飛行訓練所は、猛暑さえ気にしなければ
青々とした碧の草の絨毯が綺麗だった。
そんな中、は初めて箒に乗る事になった。
以外の生徒はどんどん箒を浮き上げ、跨いでは空へと浮き飛んでいく。
はその様子を地上で見上げていた。







「先生、僕は如何したら良いんでしょうか。」







は新品の箒、ニンバス2000を抱えてフーチ先生に尋ねた。


の箒はダンブルドア先生が買ってくれたものだった。の身内は全員殺されている。
なので、は自分で箒を買う事が出来ず結局一時期身を寄させてもらっていたダンブルドアに買ってもらったのだ。
は最新の“ファイヤボルト-X”よりも値段の安いニンバス2000にした。
今では廃れてしまったニンバス2000でも、は自分の箒として受け入れ、とても気に入っている。



この授業が始まる前にハリーに自分の箒がニンバス2000である事を話したら、
『わぁ、ニンバス2000?!偶然だね、僕も昔ニンバス2000を使ってたんだ。
 素晴らしい箒だよ。でも・・・・僕は四年前に事故があって。
 今はこのファイヤボルトを使ってるんだよ。』




ハリーはとても懐かしそうにニンバス2000を見ていた。
は、授業が終って、夕食前にハリーをニンバス2000に乗せてあげることを約束した。








「そうですねぇ、これから“クィディッチ”と呼ばれる魔法界のスポーツの実習をするので、
貴方はまだ箒に乗った事が無いようなので見学です。」





フーチ先生はそう言うと、生徒の飛び交う中心へと歩いていき、箱を取り出した。
フーチ先生は大声で何かを説明すると、その箱の鍵を開けた。
すると、一斉に中に入っていたものが飛び出し、あちこちへ飛んでいった。


「いいですか、これは練習用なので当っても命を落とすような怪我はしませんが、
 油断をしないように!本物のクィディッチはこのように甘いものではありませんよ!」


フーチ先生はそう叫ぶのと同時に、クアッフルと呼ばれる球体を頭上高く放り投げた。
そのボールはあっという間に緑色のネクタイをした寮、スリザリンにとられた。
グリフィンドールも負けてはいない。あっという間にボールを奪い返してパスをつないでいた。

は感嘆の声をあげたりしながらその様子を見ていた。
だが、様子は一変した。
丁度グリフィンドール、のネビルがボールを受け取った時、
スリザリンに体当たりを食らい、弾き飛ばされた瞬間、
運悪くも、暴れボールのブラッジャーがネビルの左足を打った。
ネビルの悲鳴と共に、バキッという何かが折れる音がして、ネビルは重力に逆らわずに落ちていく。



ネビルは地面に叩きつけられたが幸い怪我をしたのはブラッジャーに当てられた左足だけだった。

左足の折れてしまったネビルを抱え、フーチ先生は医務室へ行くと言い、
そして今まで使われていたクィディッチ道具を魔法で箱の中に戻した。
それから、すぐに戻ります。そのままでお待ちなさい。
もし、飛んだりしたなら今度のクィディッチの試合は見れないと思いなさい、と
そういってネビルを連れて行った。




「ハリー、ネビルは平気だろうか?」
「うん、大丈夫だよ。マダム・ポンフリーはどんな怪我だって治せる。」
「・・・そうか・・・・」





は、地上に降り立ったハリーに心配そうに尋ねてネビルの後姿を見送った。



「お前だな?途中から入ってきたのは。」






突然、背後からいかにも威張り腐ったような声がした。ハリーは表情をさっと曇らせ、
うんざりだ、といわんばかりな表情をに向けた。とハリーは振り向く。
金色に輝く、美しいブロンドの髪をした少年が、図太い2人に囲まれて立っていた。
口元には何か下のものを嘲笑うような冷笑を浮かべて。




「なんだ、マルフォイ。」


ハリーは、が今まで聞いた事のないようなつっぱねた声で応えた。
マルフォイと呼ばれた少年は、ふん、と鼻を鳴らす。



「お前に言ったわけじゃない、英雄気取りのポッター。」


ハリーに向ってそう言い放った。
ハリーの隣では、赤髪の少年と、栗色の髪の少女が憤慨していた。
も、直感的に、自分の前にいるこの少年は好きになれない。
そう、思った。
マルフォイはを舐めるように上から下まで見ると、ニンバス2000を見て、鼻で笑った。


「時代遅れもいいところだ。
 まだニンバス2000を持ってる者がいたなんて。
 グリフィンドールは時代遅れの寮だな。しかも・・・・・」


そこで言葉を切ると、マルフォイはの顔に自分の顔を近づけて




「飛べないらしいな」




その言葉を合図に、スリザリンは一斉に笑い出した。グリフィンドールは口々に悪態をついている。





、気にするな。マルフォイはその反応を見て楽しむんだ。」

ハリーはそっと耳打ちした。
怒りで顔が赤くなっている。




「あぁ、気にするつもりは無い。」



はさらり、と応えると、マルフォイの方に一歩踏みよった。
途端に、ざわめきが治まり、2人を注目した。




「時代遅れだなんて、君に云われたくないな。
 今時そんな古い苛めのような事をしている君のほうが僕は古いと思うけど。
 そんなことをしていて、君はちっとも大人になっていないね。本当に17歳なのかい?」
「なっ・・・・」



がそう言うと、マルフォイは青筋を浮かせる。
そして、グリフィンドールが今度は笑う番だった。
マルフォイが何かを言いかけた瞬間、校舎からフーチ先生が急ぎ足で戻ってきた。




「さぁ、箒にまだがって授業を再開します!!!」






マルフォイは何か言いたげな表情をして
を睨んでいたが、やがて空へと飛んでいった。
は涼しい顔をしてその様子を見ていた。




next.