Prompt
何時の間にか季節は夏から秋へ、
そして今は秋の下旬、冬に入りかけていた。
石で出来た廊下を歩く。
流石に此処は暖房が届かなくて寒い。
吐く息も白く濁って、寒い空気の中にさっと溶けて
その白さを見るだけでも肩の辺りがより寒く感じた。
蒼い瞳の少年、は肩を擦ると
少し猫背気味に自分の寮へと急ぐ。
秋とは言えど、もう冬に近い。雪が降るのも時間の問題だろう。
外に視線を向けると、丁度枯葉が一枚地面に向って落ちていく所だった。
「・・・あの・・さん」
静だった廊下に響いた、少し高い声。
自分に対しての呼びかけに、は振り向く。
茶色のサラサラとしたセミロングの髪の毛。
ハッフルパフのネクタイをつけた女子生徒が
そこに立っていた。
は頭二個分ほど身長の低いその女子生徒に視線を向けた。
ハッフルパフに知り合いなんていただろうか。
ましてや女子生徒。
あまり女子生徒と交流を持たなかったにとって
素朴な疑問が頭をよぎった。
と視線があったためか、その女子生徒は顔を赤らめると視線をそらしてしまう。
は不思議に思ったが、理由が良くわからなかった。
「あの、私以前図書室で本を取ってもらった
ハッフルパフ6年のレイナ・ケイトっていいます。」
「・・・・あぁ・・」
そういわれ、図書室でのことを思い出す。
確か、リーマスと課題のレポートを仕上げる為に図書室に行っていて
本を返した帰りに、届かない本を必死に取ろうとしている女子生徒を見つけた。
そして自分はその本を取って上げたのだ。
そして、今目の前に居る、レイナと名乗ったこの女子生徒がそうなのだ。
は曖昧な記憶を思い出すと
納得したように小さく声をもらした。
その声に、レイナは覚えていてもらっていたと、
嬉しそうな表情を浮べる。
はその表情を見て、
不図疑問をぶつけた。
「何で僕の名前知ってるんだ?」
「・・・調べたんです。」
「調べた?」
レイナはハズカシそうに笑うと
コクリと頷いた。
は訳がわからず眉根に皺を寄せる。
そんなに、レイナは慌てたように首を横に振って言った。
「違うんです、私どうしても言いたい事があって・・」
レイナは小さく呟くと、
スカートをギュッと握り締めていた。
心なしか顔も紅い。
はそんなに緊張する事があるのか、と不思議に思っていたが
その様子を何となく見つめていた。
レイナは意を決したように視線を上げ、を見つめる。
小さく口を開けて、その言葉をこぼした。
「あの時から、ずっとさんの事、好き、でした。
付き合ってもらえませんか?」
やけに廊下が静だと思った。
一瞬何を言われたのか解らない。
何となく聞いていたその言葉に、異質な何かが組み込まれていて。
はその言葉を理解するまでに数秒有した。
レイナはギュッと目を閉じていて、
顔が紅い。
はその様子を見て、急に恥ずかしさがこみ上げてきた。
同時に、何か言わなければ、という気持ちも出てくる。
は正直な気持ちを出す事に決めた。
「・・・ごめん。僕今は誰とも付き合う気がないんだ」
「・・・・・」
「だから、ごめん。君とは付き合えない。」
その言葉を呟いた時、チクリと胸が痛んだ。
レイナの表情が、一瞬辛そうに歪むのが見えたからだ。
だけど、彼女はすぐ笑って頷く。
とても引きつってはいたけれど。
「そ・・・そうですよね、ごめんなさい。急にこんな・・気にしないで下さい。」
ごめんなさい、と苦しげに笑うレイナに
は罪悪感を感じる。
好きではないのだから、付き合うことはできない。
同情で付き合うなんて、相手に失礼だし
最低な事だ。
は苦笑いを浮べ、泣き出しそうなレイナの頭に手を乗せた。
そしてもう一度謝罪の言葉を紡ぐ。
「君が謝る事じゃない。君の気持ちに答えて上げられないのは僕だ。
だから、そんなに悲しい顔をしないで」
「・・さん・・・」
顔を上げたレイナの瞳から
ぽろっと涙がこぼれる。
はどうしたらよいのかわからないが、
その涙を指で拭った。
レイナは小さく笑うと、その手をゆっくりとはらった。
「有難うございます。でも、これ以上優しくされると
忘れられなくなります。
私、さんに告白した事後悔してませんから。」
「・・・・・」
ごめんなさいは無しですよ、
そう言って涙を拭きながら笑うレイナに、
は如何したらよいのかもわからず、ただ、佇んでいた。
「じゃぁ、またいつか」
「・・あぁ」
レイナは小さく手を振ると、
廊下を走ってハッフルパフ寮へと向っていく。
寒い廊下に、吐き出した白い息が漂って消えていった。
はその後姿を見送ると、
俯いてグリフィンドールへと向った。
告白をされたのは初めてだった。
無神経にも傷つけてしまって、こんなとき
百戦錬磨といわれるシリウスならどうするのだろう。
リーマスならもっと優しい言葉を掛けてあげるはずだし、
ジェームズは気の利いたことを言うに違いない。
自分は、何だか悪い事をした気分だ。
彼女の涙は綺麗だった。
それを流させたのは、自分なのだろうか。
は小さく溜息を付くと、
首を横に振って前を向きどんどんと歩き進んでいった。
告白を受けたのもとに、
クリスマスのダンスパーティーの時期を意識してか
数名の女子が訪れることになるとは
この時、は思いもよらなかった。
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