Challenge.













「僕、空飛んだこと無いんだよね。」






の身体が元に戻って数日経った
ある日、よく晴れた空を見上げ「今日は絶交のクィディッチ日和だ!」
と、ジェームズが嬉しそうに伸びをした。
そのジェームズの言葉に、はそう言えば、とその言葉をこぼしたのだ。


その場にいたジェームズ、シリウス、リーマス、そしてピーターの四人は
数秒置いて、えっ、といったように顔をに向ける。
その様子に、は数秒置いて首をかしげた。



「今、なんていった?」



丸い眼鏡を掛けたジェームズの目が大きく見開かれている。
心なしか口元も引きつっていて、その隣に居るシリウスは口が少し開いていた。



「・・・まだ飛んだことないって・・・」




が小さく言うと、その言葉をすぐ傍で聞いていた
リーマスとピーターは互いに顔を見合わせた。
そして思い切りの方へ顔を向ける。



「「どうして?!」」



見事、ピッタリと2人の言葉があった。
は吃驚して2人の顔をまじまじと見つめ返す。
ピーターは顔を紅くして横にそらしたが、リーマスは目を大きくしたままだった。
横からジェームズの声がして、シリウスの声もした。


「何で?授業で習うはずだよ?」
「飛んだこと無いって・・・その年じゃ可笑しいぞ」



さぁ、説明しろ。
この2人も見事に声が重なる。
三人に説明を求められ、は困ったように頭を掻くと、口を開いた。



「え・・・っと・・・話すと長くなるんだが・・」














は理由を話した。
といっても本当のことを全て話すわけにもいかず、多少の嘘を交えながら。


自分が魔法力に目覚めたのはつい最近で、
箒に乗る授業は最初から受けていないのでクィディッチなどの
授業の時はそれを見学していた。
そしてそのうち練習しようと思っていて、教えてもらえそうな人物と
時間が見つからなかったのでまだ乗った事が無いのだ、と。


その途中何度も質問させられて話が途切れ、
また初めから、という非常に長い話になった。
そしてその話を終えた時、はすっかり疲れきっていた。
話を聞き終えたジェームズは、腕を組んでフム、と声をもらす。
その隣でシリウスは制服のポケットに手を突っ込んでを見ていた。
リーマスとピーターはの横で納得したように首を縦に揺らす。



「・・・解ったか?」
「あぁ、ばっちり。」
「そうか・・」




疲れた顔をジェームズに向けると、
ジェームズは人差し指と親指で丸を作り、バッチリといった。
は小さく頷くとぼんやりとした目を空に向けた。




空は飛ぶのにはもってこいな、青空だった。






























「・・・僕は疲れました。」



目を細めると視界がぼやける。
その先には、やけに楽しそうなジェームズの顔が。
そのジェームズと自分の手元には箒があって。



「何言ってるんだよ、君!この僕がコーチをするんだから
 そんなことは言ってはいけないよ」


チチチ、と人差し指を左右に振り、ジェームズは得意げな顔をする。
そんなジェームズを眩しそうに見つめ、は顔を顰めた。
その表情を見たジェームズは厳しい顔つきをすると



「ほらほら、そんな顔したら綺麗な顔が台無しじゃないか!」



笑え、とジェームズはの頬に人差し指を付ける。
はそれを嫌そうに払いのけると小さく溜息を付いた。
ジェームズはその様子にはまったく気にしていないようで、
手にもった箒を持って再びの前に立った。



は『箒に乗った事が無い』発言により、
ジェームズの特訓を受けさせられようとしているのだ。
しかもクィディッチのフィールドで。
無理矢理箒を渡されたが疲れて不機嫌そうにジェームズを見ると、
ジェームズはニコニコ笑った。




「さ、箒を地面に置いて」
「・・・・・」




は諦めてジェームズの言葉に従う。
箒を足元において、ジェームズのほうへ顔を向けた。
ジェームズも足元に箒を置いている。
ジェームズはが箒を置いたのを確認すると、
笑顔を浮べて、箒の上に手を向けた。



「そしたら、箒の上に手をだして。『上がれ!』」


ジェームズが『上がれ!』というと、
地面にあった箒は吸い付くようにジェームズの手の中にすっぽりと収まった。
はそれを見て拍手を送る。
と、ジェームズに睨まれた。



「拍手は良いから、ほら、もやるんだよ!」



ほらほら、とせかされ
は渋々手を突き出し、箒をしばらく見つめると
ゆっくり呼吸をし、声を出した。





『上がれ!』






一瞬、手の平から腕に掛けて温かい何かが通っていった。



風が小さく吹いて、何かを感じる。




次の瞬間、自分の手の中には箒の柄があった。



「・・・・ワォ」


一瞬何が起こったのか解らなかった。
杖を使わず魔法を使った(ということになるだろう)事は無く、
最初から出来るはずがないと高をくくっていたので
手の中にある箒の柄が不思議な感触を齎していた。



「やったじゃないか!中々良いスタートだよ、!」



吃驚して自分の手を見つめているに、ジェームズは嬉しそうに声を上げた。
その様子を少し離れたところで見ていたリーマス、ピーター、そしてシリウスの
3人はそれぞれが小さく笑みをこぼしている。
は視線をジェームズに向けると、ジェームズはニコニコと笑った。




「じゃ次は箒に跨って」




ジェームズはそう言いながら箒の柄に跨った。
もそれを見て同じように箒に跨る。



「そしたら、少し膝を曲げて、地面を軽く蹴る」



ジェームズは説明しながら地面を軽く蹴った。
フワリ、と身体が少し浮いて、足が地面を離れた。
は其れを見て、同じように膝を曲げる。


そっと地面を蹴った。






「やった!飛んでるよ、!」



ふわり、と浮く体。
は其れを感じて少しずつ遠ざかっていく地面を見つめていた。
浮かんだを見て、リーマスは嬉しそうに声を上げる。
ジェームズはやった、といわんばかりの笑顔を浮べている。



ゆっくりと上昇していくとジェームズ。
樹と同じ高さまでくると、ジェームズはの横に付き、
そしてその先を指差した。



、初めて空を飛んだのに此処までこれるのは凄いよ。
 フィールドを一周してみようか。」
「あぁ」




ジェームズがそう言うと、は首を縦に振った。
ジェームズは其れを見ると頷いてより先に箒を向けて飛んでいく。
もその後を追った。





風が心地良い。
初めて飛んだ空は、今まで自分が見上げていたのとは違う世界だった。
徐々にスピードを上げていくと、風が髪をなで、頬をなでる。
とても気持ちが良い。







「・・・、クィディッチのメンバーに入れるんじゃねぇか?」


徐々にスピードを上げ、初めてとは思えない俊敏な動きを見せる
地上から見ていたシリウスは、小さく呟いた。
その言葉に、リーマスとピーターは頷く。
現役のシーカーであるジェームズについていけるスピードをだし、
ターンやカーブも難なくクリアしている。
それにはジェームズも驚いていた。




やがてジェームズとは地面に降り立つ。
の顔には柔らか味があった。
楽しくて仕方が無い、そんな感じだろう。



降りたった二人に、三人は駆け寄った。


「凄いじゃないか、!初めてとは思えないよ」
「あぁ、本当だ」
「す、凄いね・・・」



口々にそういわれ。は笑顔を浮べた。


「あぁ、凄く気持ちよかった。」











「何か虫が飛んでいると思ったら、じゃないか」


ケラケラ笑っていると、後方から嫌な声が聞こえた。
機嫌の良かったジェームズ達の顔から一瞬にして笑顔が消える。
声のしたほうへ顔を向けると、何時しか図書館で嫌味を言われた、
ブラウンの髪をもつが居た。


「っんだと!」


シリウスはカッとしてにつかみかかろうとする。
リーマスはシリウスの腕を掴んで止めさせた。
ピーターはただ、おどおどとしてを見ていた。
ジェームズは杖を持って、何か魔法をかけようとしている。


その時、不図が口を開いた。




「虫?虫は箒に乗って空なんか飛ばないだろ。
 僕が虫に見える、なんて眼科に行った方が良いんじゃないか?」
「なっ・・・」



いきなり口を開いたをジェームズ達は驚いて見る。
も、まさか言い返されるとは思っていなかったらしく
口をパクパクさせていた。




「そう変な顔をするなよ、せっかくのいい顔が台無しじゃないか」
「・・・っ」

な?とはニッコリとした。
その言葉に、を睨むと、
フンっ、と鼻を鳴らせて背中を向けて歩き始めた。




徐々に遠ざかっていくの背中を見つめ、
は小さく笑った。




まったく、ドラコと同じような性格だ。






「すっげー、。よく言ったな」


ジェームズがの背中を叩いて嬉しそうに言う。
シリウスも同じようにに視線を向けた。
リーマスはクスクス笑っている。



「凄くないさ」





は笑いながら空を見上げた。






久しぶりにすがすがしい気分だった。






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