Bean














何とか仲直りをした二人は、泣きはらした目を互いに笑い
中庭で昔の事や2人が再会してからの事を語り合っていた。



笑い方が小さい二人は、端から見れば美男美女で見目麗しいのだが
女子生徒の喋り口調は外見に似合わず男口調で
その不自然さを除けば(除くほどのものでもないのかもしれない)
学校中の羨望の的になるだろう。







「お前、今の見た目は女なんだから言葉遣いには気をつけろよ」




そんな事を解ったのか、男子生徒、シリウスは苦笑いを浮べていった。
そう言われた外見は女子生徒のは少し気まずいように笑うと
片手で首元を押え、少し唸る。




「あぁ・・・そうか、やっぱりこの外見と喋り方は変だよな。
 セ・・・」



そこでハッとして口をつぐむ。
今、名前を呼ぼうとした人物とシリウスは犬猿の仲だと聞いた。
『セブルスにもそう言われた』
などと発言をしたら、折角仲直りをしたのに
また仲違いをしてしまうかもしれない。



は素早くそう考えると
不思議そうに首をかしげたシリウスにぎこちない笑顔を向けた。





「せ・・折角見た目綺麗なのに、拙い・・ね?」






咄嗟にごまかしの言葉が出る。
口元が少し引きつった。


流石に不自然だろう、この言い方は。



は内申焦りながらシリウスの反応を見た。



しかし、そんなの心配とは逆に、
シリウスはビックリしたように目を見開いた後
表情を崩して喉の奥で笑い始めた。



今度はが首をかしげる番だった。




何で笑うんだろう、そんなに口元が引きつっていただろうか。





「何笑ってんだよ」



ずっと笑いつづけるシリウスに、少し機嫌を損ねた
目を細めて言う。
シリウスは口元を手で覆い、ますます笑いながら逆の手でを指差した。




「・・・・ほら、また・・・言葉遣い」



笑いすぎて上手く言葉を紡げていないシリウスのその言葉に、
はまた自分が言葉遣いを失敗した事に気付き顔を紅くして
あわてて口を噤む。

シリウスは笑いすぎて苦しそうに腰を曲げている。


そんな笑い方をするシリウスを見て、は思わず口を開いた。



「だから、何で笑ってん・・・の」



何で笑ってんだよ、そういおうとした
先程から注意されている言葉遣いに気付き、全部言い終わるまでに
何とか語尾をまるめた。






「・・・・クッ・・・はっははは!!」





シリウスはがそう言った瞬間、
もうダメだ、といわんばかりに身体を曲げ、笑い声を上げた。
ゲラゲラと顔に似合わない笑い方をするシリウスには驚く。





「ダメだ、お前、その言葉遣い似合わねぇ!!」


「・・・・」




ヒーヒーと苦しそうに笑うシリウス。


静かな日曜日の異常なハイテンションだ。


大笑いするシリウスに、馬鹿にされたことに
の顔には笑顔ない。



は笑顔の消え去った、とても冷めためで
シリウスを見た。
身長的には同じなのだが、シリウスが今は屈んでいる上
から出る異常なオーラによって
笑いつづけるシリウスには気付けない威圧感がはっきりと出ている。



そんなの様子に気付かないシリウスは笑いつづけ、
そんなシリウスを見ては小さく溜息を漏らすと
思い切ったように踵を返して
蒼い芝生の上を寮のほうに向ってスタスタと歩き始めた。


「・・・・っは、?!」


急に遠ざかっていく影にようやく気付いたシリウスは慌ててその後を追う。
先程まで仲良く話していた二人の面影は其処には無い。


綺麗な黒髪の少女はスタスタと早足で歩き、
その後を綺麗な顔をゆがめながら慌てて追いかける男子生徒。
端から見ればカップルの喧嘩に見える。




「何でそんな怒ってんだよ!」





シリウスは慌てての腕を掴む。
それと同時に歩調は止まったが顔はシリウスの方へは
向かなかった。
どうやら本気で怒っているらしい。




「・・・っ悪かった!馬鹿にして悪かった!」






何の反応も見せない
とうとう本当に焦り始めたシリウスは
ようやく自分がしたことの重大さに気付いた。
腕を掴んだままの前に回り、
ガバッと深く頭を下げてみせる。



しかし、の反応は薄かった。




其れもそのはず。

自分が好き好んで女の身体になったわけではないのに
その犯人と仲直りしたと思った瞬間
女言葉を強制させられ、挙句にはその言葉遣いが似合わないときた。


流石に寛大な心の持ち主でもこの言動には腹が立つ。





はとても冷めた目でシリウスの下がった頭を見つめていた。





一方シリウスは、依然として何にも言わないの顔を盗み見ると
思わず視線を下に落とした。


の切れ長の目が自分を睨んでいた。
普段怒らない人が怒ると怖い、というのは
どうやら本当のようだ。
こういった感じは以前、どこかで経験をしている。


あぁ、そうだ、リーマスとジェームズだ。



やつ等を怒らせる事は命知らずの行動だと思える。
どうやらもその部類に入っているらしい。



シリウスはじっとりと嫌な汗が伝いそうな手を握り締めて
そんなことを暢気に考えた。





ようやく自分の中での葛藤にけりがついたと思ったら
今度は自分がを怒らせてしまった。
何ともいえない気まずい雰囲気がビシビシと身体に刺さる。






「・・・・プ」




「・・・は?」







いきなり聞こえた何かの音。
シリウスはその音に思わず顔を上げた。



其処には、口元を抑え、
必死に笑いを堪えようとしているの姿があった。






その姿を見て、思わず力が抜ける。




「おま・・なんで、笑って・・・」




クスクスと笑いを零す
シリウスの気の抜けた顔を見る事によって
余計にその笑いを深めてゆく。




意味がわからずただそれを見つめるシリウスに
は指を指していった。





「犬みたいだな」





気まずかった空気が一瞬にして消えた。



何気ないその発言に対し、
シリウスはドキッとしたように息を呑みこんだ。



シリウスはその発言を受け、しどろもどろに
引きつった笑い顔を向ける。




「・・は・・?俺・・犬?」




「うん、犬」




犬っぽい行動だったのだ、彼のあの謝り方は。


つい先程まで何かにじゃれ付いて遊んでいたかと思うと
すぐに走ってきて思い切り誤る。
そのしゅんとした行動がなぜか犬の行動に結びついてしまって
つい、面白くなって吹き出してしまった。




流石にこの発言は彼を怒らせるかもしれない。
だけど、一旦そう思ったら可笑しくてたまらないので
もう、この際何でもいいと笑ってしまった。




シリウスは数秒反応が遅れると
むっとしたような顔になった。




「・・・犬って・・・この俺が犬か?」



親指を自分の胸に向けて言う。
まるで眉目秀麗に対して失礼だぞ、と言わんばかりの行動だった。



「あぁ、そっくりだ。」




否定の仕様が無いので肯定してやった。
するとシリウスはますますむくれる。
それがどうしても可笑しいので笑いの壺がますます深くなり
笑いがまた再発してしまう。




笑いつづける
しびれを切らしたシリウスは一回息を吸い込んだ。



「俺は犬じゃねぇよ!」



怒っては居ないのだが、不機嫌なその態度に
は苦笑いを向けて
はいはい、といったようにシリウスの頭を撫でた。




「解ったよ」



その手をシリウスは叩き落とす。
もちろん痛くない程度に、だ。




「嘘だ。ぜってぇ解ってねぇだろ」


「酷いなぁ、信じてくれないのか?」




ふ、と悲しげな表情をした
その反応にシリウスは大いにびっくりして
再びの顔を覗き込んだ。



はまたそれで笑い出してしまう。




「あー、お前また笑って!もういい加減笑うな!」

「それは無理だな。」






シリウスとはそんな事ばかり取り留めなく繰り返しながら
城に向って歩き始めた。





笑いながら、シリウスとは互いに口に出さず
同じ事を思っていた。






昔の友情は変わらない。














その時、その様子をスリザリン塔のガラス窓から見ていた人物が一人。
もちろん2人はその人物が自分たちを見ているということに気付いては居ない。




その人物は、楽しげに笑いあう二人を見つめ
そして薄く微笑みを零した。








それは満月の二週間前の事だった。











next