Again
蒼い空が僕たちを見下ろしていた。
ジェームズと会って話をしたとき、
彼は寂しそうな眼をしていた。
それが何だか心の中にもぐりこんで
胸を締め付けるから、僕はジェームズの目を直視できなくなって
自分の靴のつま先に視線を落とした。
リーマスには心配をかけさせているつもりは無かったけれど、
やっぱり優しい彼は自分の所為だと自分を責めている。
手紙の書き方が悪かったのかもしれない。
でもあの日は本当に余裕が無くて、そこまで気が回らなかった。
言い訳は幾つでも出来る。けど
それじゃ本当に人に頼ってばかりになるから
逃げたくは無かった。
ジェームズは言った。
僕とシリウスは昔、親友であったと。
僕はすっかり忘れていて
(否、時間を移動させられた時に不自然にならないように忘却させられた
のかもしれない。証拠に、自分の幼い頃の記憶がなくなっていた)
シリウスを傷つけていた。
それなのに僕はシリウスを怖がって
近づかなかったし、酷い事も沢山言った気がする。
シリウスが僕に対して何時も何か撥ね付ける雰囲気を出していたのは
僕に原因があったからだった。
本当に辛かったのは、僕じゃなくて
シリウスだったんだ―――――――――
シリウスが自分を嫌う理由を知ったのと同時に
シリウスに謝りたいという感情が強く芽生えた。
そう感じたら居てもたっても居られなくなって
気付いたら身体は勝手に動いていた。
僕は走っていた。
善人ぶってるようにしか見えないかもしれない。
だけど、ただ謝りたくて。
ただ、それだけだった。
走り出したとき、ジェームズが後ろからシリウスの居場所を教えてくれた。
僕はジェームズの言葉に従って、
その場所に急いだ。
その場所につくと、一人の男子生徒の背中が見えた。
それは、間違いなくシリウスの背中で。
僕は走って乱れた息を何とか整えると
そっと声を出した。
また殴られるかもしれないと思ったけど
そんなことはどうでもよかった。
「・・・・シリウス・・・」
搾り出した声は
思いのほか細かった。
突然の細い声に
シリウスはゆっくりと振り返った。
生気の無い瞳。
は思わず目をそらしたくなった。
しかしその衝動をぐっと堪えてその目を見る。
何も映していないような瞳と
悲しげな瞳がぶつかった。
重たい空気がソコに落ちる。
きっと端から見たら
想いを告げようと緊張している女子生徒と
その女子生徒に呼び出されたシリウスに見えるのだろう。
実際、は緊張していたし
姿は女子生徒だったので。
重たい空気を割るように、
は重たい口を開いた。
「・・・シリウス、ごめん」
なんと言えばいいのか解らなかった。
謝りたい事は沢山ある。
言いたい事は沢山ある。
だけど、その感情に語彙がついていかない。
何とかして、気持ちを伝えたかった。
何か言いたげに口を開くを
シリウスは生気の無い眼で見つめていた。
俺に仕返しをしに来たのだろうか。
そんなことを軽く思ったぐらいで。
つい先日まで憎くて仕方なかった人物が目の前に居るのに
何の興味も湧かなかった。
「・・・俺に仕返しをするつもりか」
「・・・・え?」
黙っていたシリウスが突然口を開いて声を出したことに
はビクッとして顔を上げた。
しかし、その言葉を聞いたのと同時に
何ともいえない虚しいさが心を占めて涙が出そうになった。
あぁ、シリウスを此処まで傷つけてしまっていたのか、と。
「・・・違う」
泣きそうになった気持ちを
喉の奥で何とか押さえ込んだ。
やだなぁ、どうしてこんなにも泣き虫なんだ?
身体が女だから?
そう思いたい。
「言い訳に・・・なるかもしれないけど」
ポツポツと言葉を紡ぎだす。
時々突っかかりながら、
だけど感情を表す言葉を捜しながら。
自分があの日、シリウスの家に向おうとしたこと。
だけど、その途中で事故にあったこと(本当は事故なんかに
あってはいないのだけど、まさか時間を飛ばされたなんて言えない。
だけど、実際の所本当にその日に時間を飛ばされたのかどうかは覚えていない。
そしてその反動で記憶が無くなった)
あの日に出会ったシリウスの無表情な顔に笑顔を浮かばせたいと思ったこと。
は一つ一つ言葉を選んだ。
「君と初めて逢った日、君は凄く寂しそうな目をしていたから
僕はどうしても君を笑わせたかったんだ」
風が吹いて、長い髪が視界を遮る。
見慣れないその景色が
何となく切なく感じた。
今の自分は、言葉を上手く伝えきれていない。
自分の中にある、シリウスに伝えたいモノが言葉にならなくて
それをごまかすように髪の毛が視界を遮るから
余計、泣きたくなった。
「あの日、僕は本当に君と学校に行きたかったんだ。
君に、もっと友達が居る事の楽しさを教えたかった・・」
「ゴメン、シリウス。
約束守れなくて、ごめん。」
こんなに胸が苦しくなったのは、ハリー達と離れ離れに
された時以来だと思う。
気を抜けば涙が出てしまう。
は上半身を倒して泣くのを堪えた。
謝って許してもらえるとは思わない。
謝って済むのなら、最初から約束などしないだろう。
あの日、心を閉ざしてしまっていたシリウスは
自分に心を開きかけてくれたというのに。
なのに、自分はシリウスを、一番酷い傷つけ方をしてしまった。
気を失うまで殴られたとしても、足りないほどの痛みが
傷がシリウスにはあったはずだ。
其れなのに、自分はシリウスに怒りをぶつけられただけで
被害者ぶって、いろいろな人に迷惑をかけた。
被害者は僕じゃなくて
シリウスだったんだ。
は逃げてはいけないと、顔を上げた。
悲痛な表情だった。
顔を上げた先にあったのは、
無表情で見つめてくるシリウスで。
何かを映している様で何も映していない様な瞳が
真直ぐ自分を見つめていた。
堪えたはずの涙が、頬を伝って地面に落ちた。
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