Groan














「リーマスは元気か」


晴れた空とは裏腹に、気持ちはしずんだ。



「あぁ。元気だよ。でも…」


図書室を出てつれてこられたのは
クィディッチの競技場がよく見える、
図書室近くの階段脇にある小さな踊り場だった。




「でも?」


ここへ自分を連れてきた人物も、
同じように浮かない顔をしている。

答えに含まれた小さな否定の言葉を拾って返した。



その人物、ジェームズは
から視線を離すと窓の外へ移した。




その瞳に彼のフィールド、クィディッチの競技場が写る。「




でも、凄く心配してる。の事を。それと同時に自分を責めている」




はジェームズの背中を見つめた。







「責めている?何故…」




「リーマスは『僕がの傍にいたら
こんな風にはならなかったんじゃないか』って言っていた。」










一瞬
声が、出なかった。




リーマスに心配させているつもりはなかった。
まさか、自分を責めているなんて。






「…そんな…だって、僕、
リーマスに手紙書いて置いたのに…」







身体が女である事を忘れて
つい“僕”と言ってしまった。


スリザリン寮をでる前に
セブルスに注意されていた事なのに。
空間に響いた声が高すぎて違和感を感じた。

は目を伏せてリーマスの事を思った。






自分の不注意の所為でリーマスは自分を責めている。
リーマスは何も悪くないのに。



視線を落としてしまった
ジェームズら顔の向きを変えずに小さな質問を出した。




「・・・その魔法」

「・・・え?」




ジェームズはのほうに顔を向けて
眼を真直ぐ見た。




「その身体。・・・その魔法、
 ・・・シリウスだろ?」










身体がビクッと反応した。


深く考え込んでいた頭の中に
ジェームズのその言葉が、質問が
何か鋭い物で突き刺されたように入ってきて
思わず、首を横に振った。







「・・・嘘は、つかないで良いよ」





そのの反応を見たジェームズの瞳に
なにか翳った物があったが、それがジェームズが傷ついている
という事である事は、には解らなかった。




ただただ驚き、そして
その事を知られるのを恐れていた。









何で、彼が知ってる?
あの日、一度寮に戻った時に見られたのだろうか。






ドク、ドクと心臓の音がやけに大きくて
耳の奥がジーンと痺れていた。



真直ぐ見つめてくるジェームズの強い瞳に
視線を合わせていられなくなって
自分の足に視線を移す。




ジェームズの背後にある窓から入った光が
床にジェームスの形を落としていた。










「これは・・・その・・・」




なんと言っていいのか解らず言葉を濁す。
そんなにジェームズは一度目を強く閉じると
短く息を吐き出した。



そして窓枠に腰掛けると
背中を丸くした。





「・・・解った、。やっぱりそうだったんだね」



ジェームズが小さく呟いて
その場から立ち上がった気配を感じて
は慌ててジェームズの傍に寄った。





逃げたくなかった。





「・・ジェームズ、これは・・これは僕の不注意だったんだ。」





なきたくなった。

色々有りすぎて
小さな事が積み重なりすぎて。


疲れていた。



いつか糸が切れそうだった。







それでもは言葉を続ける。





「シリウスは言ってた。僕が『裏切り者』だと。
 僕はシリウスが怒るようなことをしていたんだ。」





もう女言葉だのなんだの、どうでもよかった。
言いたかった。



誰かに、迷惑をかけるのはもう沢山だった。






かすれそうな声で訴える
ジェームズは目を細めた。



痛々しかったのだ。


とても。






彼が楽しそうに笑うのを一度だけ見た事がある。


その時の笑顔と、
今の彼の顔はあまりにもかけ離れていて
胸が苦しくなった。



何が此処まで彼を苦しめているのだろう。
時が解決してくれると思っていた事は
余計に難しくなっていて、
そんな安易な考え方をしている自分がばかばかしく感じた。





―――――――何が時間だ。傷は、時間なんかで埋るモノじゃない。









「だから、ジェームズ。
 このことは・・・誰にも言わないでくれ・・」





ハァ、と苦しそうに息を吐いたの眼を
ジェームズは見つめた。



蒼くて深くて、何もかも映し出しそうな綺麗な目だった。








ジェームズは目を細めたままを見つめ、
しばらく黙った後視線をずらして大きく息を吸った。





少しの静寂が流れ、辺りは静かだった。






「・・・解った」










ジェームズが小さく搾り出した言葉だった。






はその答えを聞いて
何時の間にか力が入っていた拳の力を抜いて
気が抜けた顔になった。


しかし、呼吸を整えた後
は小さく笑った。



「・・・有難う」






ジェームズはその小さな微笑に
柔らかく笑いかけた。
その笑顔は、とても、ハリーに似ていて。

胸の奥が少し疼いた。



、君がさっき言った『裏切り者』ってシリウスに言われた事」




は首を縦に振った。




「そのことで、何も覚えてないのかい?」

「何もって・・・」




は眼を細めて
少し考え込み、やがて首を横に振った。



ジェームズはそれを見て
空中に視線を泳がす。
そしてそれから再び窓枠に腰掛けた。




「これ、言って良いか解らないけど
 君とシリウスがもめた事だ。思い出したほうがいい。」




は怪訝そうな眼をジェームズに向ける。
その視線を受けてジェームズはの顔を見つめ、
一呼吸おいてから口を開いた。












「君とシリウスは昔、親友も同然だったんだ」












その瞬間、
の中でぼんやりと抽象的でしかなった記憶が
霧を裂いたように頭の中に広がっていった。












「・・・あれは・・・シリウスだったんだ・・・」









の瞳に、あの日の記憶がはっきりと浮かんだ。













next