Invitation
金髪のその男性はスリザリン出身らしかった。
談話室での妙な出来事の後
セブルスは軽くその男性の紹介をして
に席を外すように言った。
が不思議そうに2人を見ると、
セブルスは何が起こったのか分からない様子で立っていて、
その隣で男性はを恐れるものを見るように横目で見ていた。
何となくそこに居ずらっかった。
は石で出来た廊下を歩きながら
ぼんやりとそんな事を思い返す。
自分はソファで寝てしまった。
目を開けた時にはあの男性(名前までは教えてくれなかった)
が自分を見ていた。
その瞳を見た瞬間の感覚は一体なんだろう。
ほんの一瞬だけ自分ではない誰かが意識の中に居た気がする……
はそこまで考えると小さく笑みをこぼした。
誰かが自分の中に?そんな事あるわけ無い。
もしそうなら自分は多重人格者じゃないか。
きっと自分は寝ぼけていたんだ。
自分は恥をさらしてしまっただけだ。
が顔を上げると、日曜日らしい、穏やかな光があたって暖かった。
手を前で組んで少し伸びをする。
じわじわと血液が体中に流れていった感じがして気持ち良い。
「ここで待ってるのもなぁ…」
深い深呼吸の後小さくつぶやいた。
セブルスは席を外せ、と言ったが
スリザリン寮から少し離れているとは言え、
不慣れなこの場所で暇をつぶすのは難しい。
しかも今日は日曜日だ。
授業に出て暇をつぶす(暇をつぶすというのは可笑しいが)
事も出来ない。行くとしたら…
「図書室かな」
はまだ慣れない女子生徒用の制服を翻し、
長い黒髪を肩口にはらうと図書室に向けて歩き始めた。
薄暗い談話室の中でセブルスは少し長い前髪をはらい、
その向こうにソファに深く腰掛けた金髪の男性を見た。
男性は煩わしそうに髪をかきあげるとセブルスを見る。
「…今日は良い知らせを持ってきたのだ」
ソファに座ろうとするセブルスに向けて男性は言った。
「我々のリーダーとなるお方が現れた。」
薄く口角を上げて笑った。
セブルスはその言葉に、気だるい視線を自分の足の先に落とした。
男性は喉の奥でクッと笑い、セブルスの煎れた紅茶のカップを持ち上げ、
一口飲む。
この男性の好みを熟知していたセブルスは
紅茶にブランデーを数滴いれるのを忘れてはいなかったので
その紅茶の香に男性は満足げに息を吐き出した。
そしてカップをソーサーに戻すと
しばらくセブルスを見る。
テーブルをはさんだ向こうに座るセブルスは顔を伏せているので
視線が合わない。
それを男性が気に入らなかったのか
「喜ばないのか?」、と不機嫌そうに声を出した。
セブルスはそこで顔を上げ、
男性の目を、あの気だるげな瞳で見て
小さく首を横に振った。
「誰なのですか」
男性はセブルスのその質問を聞いて、
一応関心は有るのだな、と捉えたらしく
フンと鼻で軽く笑った。
そしてセブルスにしか聞こえないような
小さな声で、身を乗り出させていった。
「そのお方の名前は―――
――――――ヴォルデモート」
その時。
ほんの少しした背中の痛みはなんだろう。
セブルスは小さくその名を繰り返す。
その言葉には微かに覚えがあったからだ。
このスリザリン出身の魔法使いが一人、
計り知れない大きな力をつけて動き始めている。
闇の魔法を使い、
禁じられた呪いを好んで使う。
その人物の話を
自分が入学したてだった頃
容の上では先輩という人たちが
自分のことでもないのに自慢実に話をしているのを聞いていた。
ヴォルデモート。
学生時代は眉目秀麗の優等生だったという人物。
セブルスはヴォルデモートに関しての知識を少し引っ張り出した後
一度視線を落とし、それからすぐに視線を男性に向けた。
「・・・それで、私にどうしろと?」
小さい溜息を吐き出すのと同じ感じで言う。
男性は僅かに持ち上げていた口角を戻し
真直ぐセブルスを見た。
セブルスはその瞳をぼんやりと見つめ、
何となく視線をそらした。
その時、男性は呟く。
「仲間になれ。」
セブルスは目を閉じた。
この言葉は
この人が自分の前に現れてからいつか言われるだろうと思っていた。
先程自分に言った、『我々のリーダー』
その『我々』という言葉からも大体察しがついていて。
そして、断ればどうなるのかも解っていた。
セブルスは目を開け、男性の目を見た。
「・・・・卒業したあなたが態々此処まで来て
私を誘うとは、手間がかかりましたな。ルシウス」
セブルスの、セブルスなりの返事の仕方に
男性は、ルシウスはクッと笑った。
「あぁ、そうだな」
ルシウスは冷たい笑いを浮べると
手を差し出し、セブルスの手を取った。
「此処を出たら、この腕にあのお方の仲間だという
シルシが入る。」
呪われた結束の印。
セブルスは何だか冷めた目で其れを見ていた。
ルシウスはセブルスの手を離すと立ち上がり、
脱いでいたローブを羽織って帰り支度を始めた。
不図、その手を止めて
まだソファに座るセブルスを振り返る。
「スネイプ・・・先程此処にいたのは?」
「・・の事ですか」
セブルスはこのソファでうたた寝をしてしまったと
思われるのことを思い出し、言った。
「が何か」
ルシウスは目を細め、口元に手を持っていくと
少し考え込むようにしたあと
目を閉じて軽く笑った。
「スネイプ、あの女は貴重だ。
絶対に離してはいけない」
スネイプは少し驚いたように目を開いた。
そして眉根をひそめてルシウスを見上げ
小さく声を漏らした。
「それは一体・・」
ルシウスは、楽しげに笑った。
「あの女は―――・・・」
が図書室に入ると、
意外にも人は少なかった。
コレなら多少寝ていていても問題は無いだろう、と
は少し笑って
カモフラージュ用に数冊の本を持つと
日当たりのいい机に向った。
本を置くと、ドスッと鈍い音がして
本が崩れる。
「あっ」
は机から落ちそうになった一冊の本を
手で止めようとしたが間に合わず、本は床に落ちた。
が屈んで其れを拾おうとしたとき、
黒い影がその本を掴んで、よりも先に拾い上げていた。
が顔を上げると、其処には――
「・・・ジェームズ・・」
難しい顔をしたジェームズが立っていた。
セブルスは息を吸い込んで
目を閉じ、深くソファに沈んだ。
先程のルシウスの言葉が耳から離れない。
『あの女は紅い瞳を持っている』
紅い瞳。
それは一体どういうことなのだろうか。
ただ一つ解るのは
これ以上、彼が自分の傍にいると
彼の身が危険だという事だ。
セブルスは目を閉じた上に腕を乗せ、
その下で薄く目を開いて談話室の窓を
カーテンが引かれた窓を見つめた。
「私は・・一体どうしたらいいのだ・・・」
カーテンを割って光がセブルスに届いた。
next