Red
目を開けると、はっきりとしない視界の向こうから
光が突き刺すように入ってくる。
その光が何となくだるくて身体を横に転がすと
見慣れないカーテンが突き刺すような朝陽から自分を守っているのが
目に入った。
まどろむ意識の中、その見慣れないカーテンを、
深緑のカーテンを見つめて、考えた。
―――――――ここは・・・?僕は確かシリウスに・・・
ぼんやりと考えて、思い出した途端
勢い良く起き上がった。
その所為で首にゴキッと痛い音と鋭い痛みが走る。
は悶えながら後頭部の下、
首筋に両手をあてがい、勢い良く起き上がったことを後悔した。
それから涙目の向こうに部屋の中を見渡し、
ここが自分の部屋でない事をしっかり理解した。
そして、昨夜自分の身に起こった事も。
昨夜、シリウスの変な魔法をかけられ
(薬を飲まされたのかもしれない。身体が以上にだるかったからだ。)
身体に異常な事が起きた。
その異常とは、つまり身体が女になってしまったという事で
その上シリウスに犯されそうにもなった。
絶望の中で誰も助けてはくれないのだと思ったとき
セブルスが助けてくれた。
そのあと、自分を助けようとしてくれたセブルスと
シリウスが殴りあいになり(もともと犬猿の仲だったらしい)
何とか2人を引き離すとそのまま部屋を出た。
シリウスはまだあの部屋にいたに違いない。
それでも自分たちが出てからも部屋から出てこなかったので
は不思議に思っていた。
身体の異変についてはセブルスに隠せるはずも無く
あっさりとばれてしまい、散々説教された後一度グリフィンドールに戻り
必要な荷物を持ってからスリザリン寮へとつれてこられた。
グリフィンドール寮に戻った時、
リーマス当てに一通の短い手紙を書いておいてきたのだが、
彼は気付いただろうか。
そんなこんなでこの部屋をセブルスに与えられて
身体の異常が治るまではスリザリンの女子生徒として
生活するように言われた。
何でも、薬学の得意なセブルスでもこの手のものは
薬が配合するのがむずかしいらしい。
創れない事はないのだが創らないのは
に対しての処罰だとセブルスは言っていた。
最も、スリザリン寮に来たのはこれらの理由だけではない。
グリフィンドールにはを知っているものが多い。
シリウスも同じ寮で、そのシリウスに”嫌われている人物”として
の知名度が高いにとってこの異変が寮内にばれていい
環境になるとは到底思えなかったからだ。
そこでセブルスは他の寮と比べればあまり他人に干渉しない
この寮で身体が元に戻るまで生活し(もちろん姿は女子生徒の格好をするが)
あまりこのことを外に広めないようにしようと考えたのだ。
そしてはその計画の第一日目をスリザリンの一室で
迎えたというわけで。
はその事を起き抜けだったためか一瞬忘れていたが
寝ぼけていた頭を何とか起こし、ココまでの経過を思い出した。
もう一度窓のほうへ首を向ける。
さっき思い切り起き上がったときに筋を違えた首は
もう何ともないようで痛みは無かった。
ベッドサイドに置いてある時計は6時55分を指していた。
7時30分に談話室でセブルスと落ち合う事になっている。
は昨日のことですっかり疲れきってまだ眠っていたいと
悲鳴を上げる体をベッドから引きずり出し、着るにはまだ抵抗のある
女子生徒用の制服に顔を顰めながら腕を通した。
制服を着ていくうちにセブルスに対しての罪悪感と感謝が押し寄せる。
そして、シリウスが言った『裏切り者』の言葉の意味。
自分は彼にとって裏切り者らしいのだ。
しかし、彼に対して一体何をしたのだろう。
それすら分からないのにただ憎まれ、怯えている自分。
そしてそれから守ってばかりいる自分。
自分が一番腹立たしかった。
最後にローブを羽織、
変な所はないか、と鏡を見ると
髪の毛の長さが足りない事に気付いた。
このままでは自分の顔を見慣れた人にはばれてしまう。
そうしたら女装の趣味があるのだと噂されて・・・悲劇だ。
はしぶしぶ自分の杖を髪に向けると
肩より少し長めに伸ばした。
見慣れない少女が、鏡の中で不機嫌そうに杖を持っていた。
グリフィンドールとは違って、
朝だというのにまだ薄暗い階段を下って談話室に行くと、
そこには誰もいるはずが無かった。
むしろ不気味な感じがするほど嫌な雰囲気の談話室だった。
まさにスリザリン。
は何となく心細くなって暖炉前のソファに座った。
そのソファは上等な革張りのすわり心地が大変良いもので
無理やり起こしてきた体の中に少し残っていた眠気と不気味なほど
静かな空間の中では猛烈な睡魔に襲われた。
――――駄目だ、ココで眠ったらセブルスにまた文句を言われる・・・
しかし、抗う宅やの意識は
無力にも眠りの世界へと引き込まれていった。
白くてフワフワした世界。
どこを見ても、何も無い。
あぁ、そうか。
これは夢だ。
どこまでも続く夢だ。
とても心地いい。
はゆっくりと足を一歩前に出した。
が足を着けたところから水面のように柔らかく波紋が生まれ、
広がっていく。
とても綺麗で、柔らか気だった。
は広がっていく波紋を目で追った。
やがてそれは広がりきり、何かにあたって
その波紋が途絶えた。
はその何かに視線を移す。
それは、人だった。
今の自分と同じように白い服を着た
背丈はと同じくらいで、漆黒の髪を持った――少年。
「君は・・・誰?」
が発した言葉はさっきとおなじように波紋となって広がっていく。
不思議な感じだった。
その波紋が少年に届くとすぐに
その波紋が返って来た。
少年は何も言わなかった。
目を閉じたまま、口元を綺麗に持ち上げて
微笑んでいる。
はその綺麗さに思わず見入った。
少年の周りの波紋が小さく、薄く消え去り始めた頃
ゆっくりと少年はくちをひらいた。
その声は不思議な感じを与える物だった。
「僕は君の半分。」
波紋が、広がった。
「半分・・・?」
波紋がまた一つ生まれて少年の発した波紋とぶつかった。
「そう。僕は君で、君は僕だ」
ぶつかった波紋が消え、また新しい波紋が生まれる。
「君が・・・僕で・・?」
小さな波紋が大きな波紋に飲み込まれた。
が戸惑ったように表情を崩すと
少年はまた小さく微笑んだ。
最後の波紋が消えたとき、
少年は目を、ゆっくりと開いた。
は思わず息を呑んでその瞳を見つめた。
それの瞳は少年の黒い髪に良く映える、とても深い赤だった。
少年は、また笑った。
next
・・・・時間が無かった・・・