Premonition
























部屋に戻ると、自室のベッドサイドにある
小さな棚からそれ専用のケースに入った
ティーセットを引っ張り出すとカバンに其れを慎重に入れる。





それを部屋の出口に近い机の上に置くと
軽く鼻歌を歌いながら、先程ティーセットを出した棚の傍
にある自分のトランクケースから紅茶の葉が入った缶を
引っ張り出し、其れも同じように
机の上に置いてあるカバンの中へ入れて
部屋を出た。






何時もジェームズかピーターのいる部屋は、
誰もいない。




の部屋へ向う最中、
カバンの中にある荷物がカタカタと
陽気な音を出していた。











お茶のお供、
クッキーやチョコはの部屋にある。




それらが全ての物、というわけではなく
リーマスが持ち込んだお菓子が大半を占めていた。





彼、リーマスは甘い物が大好きだった。
普通の男子に比べると少し食べ過ぎな部分もあるのだが、
その食べた分が身体に肉としてつかないのは
良く羨ましがられたりする。



紅茶を飲む時にも
角砂糖を5つほど平気に入れるので
ジェームズがそのリーマスの紅茶を飲んで
しばらくは甘い物を一切受け付けなくなった事もあった。



シリウスは基本的に甘い物全般が駄目なので
リーマスが美味しそうにチョコレートをかじっているのを
見たりするのですら駄目だった。


ピーターは、リーマス程ではないが
甘い物が好きだった。
そのため、ホグズミートなどに出かけたときは
2人でたくさんのお菓子を買った。
(しかしそのあとたった三日で2人はお菓子を完食した)





そして、最近はとよく紅茶を飲む。
は紅茶が好きで、よくストレートのまま飲んでいた。
甘い物もそこそこ好きで、シナモンクッキーやミルクチョコレートが特に好きだった。



最近はスコーンにクロッテッドクリームをつけて食べるのがお気に入りだ。










リーマスはの部屋に入ると、
窓際にある机にティーセットの入ったカバンを置いて
お菓子の貯蔵してある、誰も使っていないベッドサイドの棚へ
足を向けた。





この窓際にある机は、リーマスが頻繁に部屋に来るように
なってからがこっそりとしもべ屋敷妖精に頼んで頂いてきたもので、
小さいながらもお茶をするのには十分な大きさだった。







リーマスは棚から今朝、しもべ屋敷妖精からもらったスコーンや
ジャム、クロッテッドクリームを引っ張り出すとそれらをカバンの
横に置いた。


しもべ屋敷妖精はリーマス達が頼めば何でもくれた。
ただし、あまりにもサービスが良いので必要とする量の2,3倍
はいつも出される。

そういった時はしもべ屋敷妖精に優しく
「皆で食べなよ」
と言うと、しもべ屋敷妖精は
感激して次回の時も喜んで差し出してくれるのだ。






そのしもべ屋敷妖精には、不思議な事があった。




が何かを頼むと
すぐに、それこそリーマスが頼んだ時の二倍近い速さで
準備をして必ず量も多い。
何か命令されたなら、それがどんな命令だろうと
忠実に従うだろう、そんな雰囲気があるのだ。




その事についてリーマスはもちろんの事、
自身もしもべ屋敷妖精が尽くすのか理由が全くわからなかったし、
聞いてみたこともあったが、ただ笑って、
「私達のやりたいようにやっているだけでございますよ、お坊ちゃま方」
と、いうようにはぐらかされてしまい、
今ではあまり気にしなくなっていた。























「・・・遅いな・・」



お茶の準備は整い、あとはが来るのを待つだけ
となったが、リーマスとが別れてから30分は経っていた。



――――途中で先生に捕まったのかな、成績良いし・・・



リーマスはそんな事を考えると、
クッキーを一口かじって読みかけの本に手を伸ばして
もう少し待つことにした。




































本を読み始めてからどの位たった頃か。
時計に目をやれば、
を待ち始めてそろそろ一時間ほど経とうとしていた。


リーマスは流石に本を読みながら待っている、
という気ではなくなりを探しにいこうと思い立った。






が転入してきて二ヶ月を過ぎようとしているが
何せ広すぎるこの城。迷ってしまってはいないだろうか。

気ままに動く階段に捕まってしまえば
あせって知らない場所へ入ってしまう。
そうなると、仮令一年のときからこの学校で生活を
している生徒といえども簡単にまよってしまうだろう。
はそのようにして迷っているのでは・・・



リーマスはそう思うと
いても経ってもいられず部屋を出た。
途中、談話室を通った時
ピーターがソファでコックリコックリとしているのを
見かけだが、其処にいたのはピーターだけで
シリウスやジェームズはいなかった。





リーマスはピーターを起こして
を見たかどうかを聞こうかと思ったが止めておいた。
もし、ピーターがを見ていたならは部屋に戻ってきているはずだし
第一、ピーターが寝ている事も無いはずだ。




リーマスはピーターを起こさないように
静に扉を開けると寮を出た。




と図書室を出た辺りからその周辺を中心に、
様々な部屋を見たが、の姿は何処にも無い。
リーマスは小走りで廊下を見回った。





一瞬、忍びの地図を使おうかと考えたが
あれはジェームズが使った後見つかって没収されたのを
思い出して深くため息をついた。






特に根拠は無いけれど
胸の奥に不安が募る。
嫌な予感がする。


自分が、人狼である所為もあるのかどうか解らないが
こういう予感は外れた事が無かった。



リーマスはその不安を消し去るように
拳を石で出来た壁に打ちつけた。





ゴッ、という鈍い音。





じんわりと血が滲んだ。





「・・・・・・・」


































中庭を歩くと、雨の匂いのする風が吹いた。



セブルスは少し長い髪が視界に入ってくるのを
煩わしげに手で横に流しす。
そしてそのまま空を見た。




夕焼けに染まり行くいつもの空は、
灰色の大きな雲が出ている。




あぁ、今夜は嵐になるな。



そんなどうでもいい事を
頭の角で思うと視線を元に戻した。




中庭を抜け、廊下に入ってしばらくすると
案の定、ぽつぽつと雨が降り始めた。
次第に激しくなるその音を聞きながら
天文台のある北の塔へ足を進める。


昨日の天文学の授業で出された課題をさっさと片付けるのが目的だった。


課題を見て、ある人物を思い浮かべた。




蒼い瞳の不思議な少年、



何時も遠い目をしてどこかを見つめていて
疲れたような雰囲気を出していた彼は、最近明るくなった。
それは自分とのかかわりもあってのことだろうが、
自分のほかに、彼と友達になった人物が出来たのだろう。
それも、とても身近な人間。
でなければ何時も楽しそうにしているわけが無い。





彼は、笑っていたほうがいい。





笑顔や、楽しさといった、人が好むモノ
が昔から得意ではなかったセブルスは
の笑顔だけは素直にいいな、と思った。



もし、自分に弟がいたら
こんな感じなのだろうな、とと勉強をしていて
そう思ったことがあった。





セブルスは、ハッと自分がそんなことを考えていた
ということに気付くと、自嘲気味な苦笑いを零した。






そうこうしているうちに天文台へと辿り着いた。
セブルスは大きな望遠鏡の置いてある窓際にカバンを下ろすと
その中から羊皮紙と羽ペン、インク壺を出す。


その時。


天文台のすぐ近くにある部屋から物音がした。





「・・・?」



セブルスはその物音に、不機嫌そうに眉根に皺を寄せると
其処へ近づく。
そして取っ手に手をかけた。





ギィィ、と古びたちょうつがいが軋む音がして
扉が内側に開けた。





中にいたのは、2人の人間。



一人は床の押し倒されていて、
もう一人はその押し倒している人間の腕をねじ上げていた。




苦しそうにもがく、組み敷かれた人間―――・・





「・・・?!」

















は、ビクッとしてセブルスを見た。

その瞳には、絶望の色が浮かんでいた。








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