僕は、君と“友達”になりたいんだ。
One step.
「ごめん、セブルス。先に帰っててくれ。」
そう言うと、元から不機嫌気味な彼の眉根に
数本の皺が寄る。
はそれを見て、思わず笑いそうになるのを何とか堪えた。
今日の授業は午前中だけで、久しぶりに
ゆったりとした時間を過ごせるような良い天気だった。
は自分の羊皮紙や本を鞄に詰め込んで、
端っこの机の上に置いた。
「いくら天気が良いからといって
授業中に寝る馬鹿がどこにいる。」
腕を組んだセブルスが、
大分イラつきながら言った言葉には
たっぷりの嫌味ととげとげしさが含まれているのが
セブルスの顔を見なくても解った。
はセブルスに見えないように苦笑いを零す。
「しかたないだろ?こんなに良い天気なのに
眠くならないほうが不思議なくらいだよ。」
が大げさに手振りをつけて言うと、
セブルスは「開き直るな」と言うと
ふっ、と溜息を吐きだして教室から出て行った。
は呆れ半分で出て行ったセブルスの眉間に
よった皺を思い出して一人で苦笑する。
そう、はセブルスの言う通り
この良い陽気の誘惑に勝てず、あろう事か
授業中に居眠りをしてしまったのだ。
その罰として今日最後の授業だった
魔法薬の教室の掃除を言い渡されたのだ。
しかも、魔法は使えずマグル式の箒と雑巾で。
しかしはもともとマグル界で育ったため、
このような掃除はやりやすかった。
それでもこの広い教室を掃除し始めて約一時間経つが、
まだ半分しか片付いておらず、は箒を動かす手を止めて
残り半分の教室をウンザリした表情で見渡した。
その時、教室の扉が開いた。
「・・・あれ?」
教室に入ってきた人物は
一人で掃除をしていたの後姿を見つけて
驚いたような声を出す。
も驚いてそちらを見た。
そして、その人物が誰だかわかった瞬間に
心臓がドクドクと早鐘のように脈打ち始め、体中に嫌な汗が
滲むのを感じた。
「・・・・・」
その教室に入ってきたのは、
何時の日かをジェームズ・ポッターと似ている、
と言った
リーマス・J・ルーピンだった。
リーマスも驚いた顔をしてを見る。
2人の間に嫌な空気が流れた。
「・・あ・・」
リーマスが口を開きかけた瞬間
は警戒したように一歩下がった。
その姿を見て、リーマスはを直視できなくなって
視線をそらした。
「あのさ・・・」
リーマスは、が怯えた視線を向ける中
気まずい雰囲気を何とか晴らそうと声を出す。
それが成功する確率は極めて低いのだけれど。
どうして彼が此処まで自分たちに
恐怖心を、警戒心を剥き出しにするのか
まったく理由は解らない。
だけど、唯一解っている事といえば
彼はシリウスに殴られた事や、
何かに大きく傷つけられていることだ。
そしてその原因であろうシリウスと仲の良い自分たちに
怯えるのは当然なのかもしれない。
だけど、このまま彼を孤立させるにはいかない。
彼が一人で居て良いわけ、ない。
しかし、彼は絶対に彼自身から此方に近づいてくるはずが無い。
「・・・・っ」
リーマスがゆっくり足を踏み出すと
は顔を引きつらせて、手に持っていた
箒をリーマスに投げつけた。
リーマスは投げつけられた箒を腕で受けると、
逃げようと背を向けるを追いかけた。
彼が自ら此方に来る事はまず無いだろう。
なら、どうする?
答は簡単だ。
「!!!」
「・・・っ?!」
此方が一歩、歩み寄れば良い。
仮令、強引な事をしてでも。
リーマスは逃げるの腕を掴んだ。
案の定は驚いて足を止めたが、
顔に恐怖の色を浮かべてリーマスの腕を振り解こうと
躍起になって暴れた。
しかし、リーマスはそれを許さない。
激しく暴れるを離すまいと掴んでいる腕に力を込める。
「・・・っ、、僕の話を・・」
リーマスは何とかに話し掛けようとするが
は首を振って必死にもがいている。
まるで、蜘蛛の巣に捕まった蝶のように。
リーマスは、そんなの姿が痛々しく感じられた。
此処まで彼を追い込んだのは
シリウスでも有るが、自分でもあるのだ。
その事実がリーマスには痛かった。
リーマスは息をぐっと吸い込むと、
腕にありったけの力を込めてに近づく。
「!!僕の話を聞いて!!」
ビクッとの動きが止まる。
突然怒鳴られては一瞬暴れる事を忘れ、
リーマスを見つめた。
リーマスはの腕を掴んでいる手を緩めないように気をつけながら
の瞳を真直ぐ見つめた。
「、僕は君に危害を加えるつもりは全く無いんだ。」
リーマスが真剣な表情で、
落ち着きのある声で言った。
そのリーマスの気をはった雰囲気には
強張らせていた体の力を徐々に抜いていった。
リーマスも其れに気付き、静にの腕を離す。
「、シリウスが君にしたことは
悪い事ばかりだ。でも・・・」
「僕が、君と友達になりたいと思うのは
無理な相談・・・・?」
“シリウス”という名前に一瞬身体に力を入れたが
次のリーマスの発言、“友達”という言葉に
は驚いて目を見開く。
リーマスは静に微笑むと、片手をの前に差し出した。
「改めて自己紹介するよ。
僕はリーマス。リーマス・J・ルーピン」
は呆然とその手を見詰めた。
「僕と、友達になってくれる?」
優しくかけられた言葉に、
は顔を上げてリーマスの顔を見た。
とても優しい微笑が自分を見ていた。
は、ゆっくりと緊張したように手を重ねる。
「・・僕は、。
・・・」
「よろしく、。」
重ねた手は、力強く握り返された。
その強さに、
は目を細めて嬉しそうに微笑んだ。
それは、がリーマスの前で見せた、
久しぶりの暖かい笑顔だった。
その笑顔に、リーマスも嬉しそうに笑う。
「そうだ、。君罰掃除してたんじゃないの?」
リーマスははっと思い出したように
床に落ちている箒をに渡しながら言う。
途端にの顔は真っ赤になった。
は穂息を受け取ると
リーマスの腕を掴みそ、そして袖を捲り上げた。
思った通り、其処は赤みを差して紫色のアザが出来ていた。
「・・ごめん、リーマス。
僕、混乱してて・・・」
リーマスは苦笑いをして腕をしまった。
そして静に首を横に振る。
「仕方ないよ。混乱するのは君のせいじゃない。」
優しく言われた言葉に、胸の奥が疼く。
どうして自分はこんなにも良い人を拒絶していたのだろう。
今思えば凄く失礼な事をしたように思える。
はそんなことを思うと、
また罪悪感に包まれた。
目を伏せ、俯いてしまったをリーマスは見つめる。
「」
不意に名前を呼ばれて顔を上げた瞬間――――
バチッ
「っ痛?!」
額に走る痛み。
は思わず其処に手をもっていった。
驚いてリーマスを見てみると、リーマスは
少し険しい顔をしていた。
「、君は何も悪くない。
だからまだそんな考えをするようなら、もう一発いくよ?」
そう言っての額に向けて
デコピンの体制をとる。
はそれを見て慌てて手を前に突き出した。
「リ、リーマス・・」
そんな慌てた様子のを見たリーマスは、
堪えていたのか、片手で口元を抑えたかと思うと
腹を抱えて笑い出した。
は口をパクパクさせていたが、
やがてリーマスの笑いにつられて笑い出した。
「あー可笑しい。、君って
デコピン苦手なんだね。良い弱点見つけたよ。」
そう言ってリーマスは笑いすぎて出た目じりの泪を拭う。
それを見ては膨れっ面をした。
「五月蝿いなぁ。リーマスのは痛かった」
「そう、ゴメンね。もう特別な時にしかやらないから。」
「特別って・・・で、リーマスは何で此処に?」
のその質問に
リーマスははっとしたように教室内を見渡し、
そしてを見る。
「うん、ちょっと解らない所があってね。
先生に聞こうと思ったんだけど・・・居ないみたいだ。」
とリーマスはガックリとうなだれる。
はそれをみるとある条件を思いついた。
「リーマス、僕でよければ教えるよ。得意なんだ。」
“得意”とは言うものの、
殆どセブルスに教えてもらったりしたものなのだけれど。
はそんなことを思いながら
リーマスに提案した。
その提案にリーマスは顔を上げて嬉しそうに
首を縦に振った。
「本当かい?頼むよ。」
リーマスが嬉しそうにそう言うと、
は頷いて、こう言った。
「じゃぁ、此処の掃除手伝って」
「・・・・え」
一瞬リーマスの動きが止まった。
は思わず笑いそうになるのを堪える。
「嫌ならいいよ?リーマスが先生を探しにいけばいいんだし。」
ね?
とが微笑むと、
リーマスは嫌そうにもう一本の箒を持ち出した。
そしてに顔を向け、
「君ってこんなキャラだったの」
そう言った。
はクスクス笑うと
首を傾げてみせる。
そんなにリーマスは溜息を付くと箒を動かし始めた。
「でも、いいか。友達だもんね」
リーマスがポツリといった言葉に、
は嬉しそうに笑った。
遠い未来、
彼等ともこんな会話をした。
それは、自分がまだ打ち解けていない頃の日。
彼は、そこで彼等と打ち解けて
“友達”になったのだ。
「リーマス」
「ん?」
「・・・有難う」
next
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誰かと接点を持たせたいなぁと
思ってリーマス氏。