何もかもが幻のように見えるんだ。
今も、何処かであなた達が生きているのだと
信じていたいように・・・・・・。




 

02. Moralist








重たい瞼を開けると、罅割れている白い天井が目に写った。
夢から覚めて、一番初めに脳裏に浮かんだ言葉。






「・・・・・どうして・・・・」








どうしてだ?
どうして母さんと父さんが殺された?
どうして自分だけがこうして生き延びている?










”やつら”とは、
一体誰――――?





憎しみと、悲しみと
両親を失った事に対しての恐怖が身体の隅々まで侵していった。






「おぉ、目が醒めたかね?」
「!」






身体を起こすのと同時に、意識を失う前に聞いたのと同じ
優しくて、年をとった声が聞こえた。
クリーム色のカーテンの向こうから、優しい眼差しをくれる、
白いひげの老人―――――







「・・・・あなたは・・・・?」









は自分を見つめるその”老人”に声を掛けた。
のその質問を受けると、”老人”はゆっくりとの寝ているベッドに近づく。







「わしは、ダンブルドア。この学校・・・・ホグワーツの校長じゃよ。」




眼鏡の向こうの瞳が、優しい色をしていた。



「君の名はなんと言うのかの?」









優しい声だった。傷ついた心に染みていくような温かい声。









「・・・・・僕は・・・・
 ・・・・。」









ダンブルドアは、微笑むと、の手を取って
そしてベッドの脇に腰掛けた。











「よろしく、
 ・・・目が醒めてからこんな事を聞くのは酷じゃが・・・・君はとある場所から現れた・・・。
 君に、一体何が起こったのか話してはくれないかのう?」











は、背筋が凍ったように感じた。
嫌な汗が流れる。



困ったように顔を上げると、優しい表情のダンブルドアがいた。







―――あぁ、この人になら。―――




この人になら、何でも言える。


全てを、忘れてしまいたい記憶も、全部。




風が、静かに流れ込んできた。
窓の外は、柔らかい碧の世界。

なんて穏やかなんだろう。











「・・・・僕のいた場所で、 僕の両親は殺されました。
 父さんは死ぬ直前、こう・・・・云っていました・・・・。」





からだが、震える。口に力が入らない。
それに気付いたのか、ダンブルドアは手を握ってくれた。



―――云わなければ。
    また、辛い思いをする。――






は目を閉じて噛締めるようにぽつり、ぽつりと話し始めた。






「『やつら』に居場所が知れた、と。
    説明している暇が無い、早く逃げろ、と・・・。
 その後は・・・・・分かりません・・・。」
「・・・・・そうか・・・・。」






は大きく息を吐き出した。
思い出したくない過去が一気に流れ出てきて。辛かった。




「・・・・辛い事を思い出させて悪かった。
 しかし、君には一人でしまっておけるようなことではない。 
 辛いなら、泣くが良い。それでも駄目ならば、わしに相談するといい。」







とても、優しい声だった。
昔、父さんとよく遊んだ時の声に似ている。

辛いんだ、きっと。


「・・・・すみません・・・・」




ぷっつりと糸が切れたように涙が止まらなかった。
優しい風に吹かれて、遠くにいってしまった両親を思って、泣いた。


さようなら、父さん、母さん。




僕は、生きるよ。


あなた達が何を恐れていたのか分からないけど。



それでも僕は、恐れずに生きてみせる。







さようなら、父さん、母さん。



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