俺は被害者だ。
Hatred.
ジェームズとリーマスは
シリウスが何時ものように気だるそうに
談話室に入ってくるのを見つけると、
シリウスも2人に気付いたらしく、悪戯っぽい笑顔を浮かべて
歩み寄ってくる。
「よぉ、ジェームズにリーマス。
どうだ?新しい計画は進んでんのか?」
シリウスはジェームズの向かい側、
リーマスの斜め前のソファに座ると机の羊皮紙に視線を落として
笑顔でそう言った。
リーマスは曖昧に笑顔を浮かべていたが、
ジェームズはニコリともしなかった。
「どうしたんだよ、ジェームズ。」
シリウスはそのジェームズの表情に気付き、
ふざけたように言った。
ジェームズはシリウスから視線を反らして
悪戯の計画の紙を手に取った。
そのジェームズの顔は穏やかに見えたが、
リーマスは不安を感じずには居られなかった。
そんなリーマスの不安をよそに、
シリウスは手前にあった悪戯計画の紙を手に取り、眺める。
「あぁ・・・これ良いな。」
シリウスが手にとったのは、
一時的に異性に変える魔法だった。
シリウスはその内容をゆっくり読むと
口角を緩やかに持ち上げて笑った。
「何?」
何も言わないジェームズを気にかけながらも
リーマスは笑みを零すシリウスに問うた。
シリウスはリーマスとジェームズに良く見えるように羊皮紙を
机の真中に差し出す。
「この悪戯さ。アイツに仕掛けようぜ」
シリウスはさも、楽しげにそう提案した。
「・・・シリウス、アイツってスネイプか?」
其れまで黙っていたジェームズが
不図口を開いた。
シリウスは持っていた紙を机に置くと
楽しそうに身を乗り出した。
「スネイプにも良いかもな・・・」
「スネイプにもって・・・まさか・・」
リーマスは計画の紙に目をやり、
驚いたように声を出してシリウスを見た。
「リーマス!何でそんなに驚くんだよ。
たまには違うやつでもいいだろ?」
そんなにスネイプの反応見たいのか?
と、シリウスは可笑しそうに笑う。
リーマスとジェームズはそんなシリウスの方へ
視線を向けた。
やがてシリウスは不図笑うのを止めて
今回の悪戯のターゲットの名を口にした。
「だ。」
シリウスがその名を嬉しそうに発した時、
リーマスも、シリウスもジェームズの指が
ぴくっと動いたのには気付かなかった。
「アイツ女顔だろ?女になったって一週間も
すれば元に戻るんだ。別にいいじゃねぇか」
「・・・シリウス・・」
リーマスは困ったようにその紙を丸めたが、
シリウスはその紙をリーマスの手から抜き取り、
楽しそうに話しつづけた。
「いくら身体が女だからって
精神は男のままだからなぁ、犯されでもしたらさぞ屈辱的だろうな」
アイツの顔がゆがむのが目に浮かぶぜ、
とでも言うかのようにシリウスはククッと笑いを零した。
ガッ
「・・シリウス、それ以上言ってみろ。
二度と喋れなくしてやる」
「・・・っ」
一瞬の出来事だった。
リーマスとシリウスは何が起こったのか
解らず、驚いて目を見開いた。
ジェームズがシリウスの胸倉を掴んで立ち上がらせたのだ。
“二度と喋れなくしてやる”
そう言ったジェームズの声は、
普段柔和な彼の声とは比べ物にならないほど
冷たく、低くて圧迫感のある声だった。
その声に、その真剣な表情にシリウスは口を閉じたまま何も言えなかった。
リーマスも同様で、驚いた表情のまま
立ち上がっている二人を見上げる事しか出来なかった。
ジェームズはやがて力を抜き、
シリウスを離す。
シリウスは力なくよろけ、ソファに座り込んだ。
「・・シリウス、君が何故其処までを嫌がるのかは
僕にはわからない。
けど・・・・」
シリウスがゆっくりと視線を上げると、
目を細めたジェームズが居た。
きつく握り締めた右の拳かがかすかに震えている。
ジェームズは、余程怒りを抑え、
殴りかかろうとする自分を、
極限の理性で縛り付けているのだろう。
その拳には、うっすらと血がにじみつつあった。
「これ以上を傷つけるのは許さない。」
彼はそう言うとそのまま談話室を飛び出して行った。
談話室の扉が閉まる音を、どこか遠くから聞こえるような感覚で
聞き流すと、シリウスは両肘を机に付き、頭を抱えた。
「何でアイツの事を気にかけるんだよ・・・」
俺はただ、スネイプと同様の扱いをしているだけなのに。
何故ジェームズは其処までアイツを庇うんだろう。
シリウスは小さく呟くと、
悔しそうに下唇をかむ。
少し、鉄の味がした。
「・・・シリウス、今悪いのは君だよ。」
カタッと隣で席を立つ音がして、
それと同時にその言葉が降って来た。
シリウスは驚いてその声の持ち主―――リーマスを見上げた。
リーマスの表情は、さっきのジェームズ同様
普段柔和な、微笑を絶やさない彼からは想像もつかない
ような、険しいものだった。
リーマスは続ける。
「ジェームズが言う通りだよ。
どうして其処までを嫌うの?」
「君がさっき言った、
“スネイプと同様に”って言う言葉。
の扱いとは全く違ってる。」
リーマスは机の上に散らかった羊皮紙や羽ペンを、
自分の杖を振って片付けると、鞄を持って一歩踏み出す。
「君がにしているのは―――・・
――嫉妬の暴走だ。」
リーマスはそのままシリウスに背を向けて
静に談話室を出て行った。
「・・・リーマス・・」
シリウスは大きく目を見開いてリーマスが出て行った扉を見つめた。
シリウスは視線を落とすと、自嘲気味に笑いを零す。
確かにリーマスやジェームズの言う通りだ。
自分は・という男に嫉妬している。
何故だ?
自分に何故か怯えた視線を向けるからか?
自分がこの7年間必死に作り上げてきた世界に
アイツがすんなりと割り込んできたから?
否、
忘れているからだ。
自分はしっかりと覚えているというのに。
アイツは忘れているのだ。
そして、アイツに全てを奪われるという恐怖がある。
家の事を押し付けられてきた日々から
ようやく解放されるこのホグワーツでの生活に
自分なりに造ってきたこの世界に。
ジェームズも、リーマスも、ピーターも皆アイツに取られる。
そうだ、そいつを追い出そうとして何が悪い?
俺は被害者だ。
俺は何も悪くない。
そうだろ?
シリウスは不適に微笑を浮かべると、
自分が握り締めていた紙にかかれている
あの魔法を、かけるため自室へ戻った。
嫉妬だろうと迫害だろうと何だっていい。
アイツをとことん傷つけてこの学校から追い出してやる。
俺を傷つけたように。
この時、
誰一人としてシリウスの暴走に気付く者は居なかった。
next
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壊れ気味シリウス。
どんどん悪役へ・・・あぁぁ
修正/3.28