どうして君まで恐れるんだろう?






Huddle.









「その頬、そのままだと数日あとが残る。
 これをはっておけ。」

セブルスはそう言っての左頬、
シリウスに殴られた跡が痛々しく残るその場所に、
ペタっと湿布をはった。(湿布といってもセブルスが造ったものだ)
そのひんやりとした感覚に、は気持ち良さ気に目を細める。

「有難う、セブルス。」

がお礼を言うと、
セブルスは照れたように咳払いをし、寮へ帰るために
本や羊皮紙を纏め始めた。
も自分の羊皮紙を腕に抱え、二人は図書室を後にした。


古びた廊下を歩くと窓の外は綺麗な夕焼けだった。
あと少しで夕食だな、とはぼんやり考えた。


やがて2人は各寮へ別れる階段についた。
は落としそうになった羊皮紙を抱えなおすと
鞄を持ち、気だるそうに立っているスネイプに目をやった。


「何だか何時もすまないな、セブルス。」
と、はふっと息を吐き出し、
すまなそうにセブルスに視線を送った。
セブルスはその視線を見下ろす形で受け取ると、
「別に構わん。」
と独り言のようにポツリと応えた。





彼、という男の瞳は
何時だってどこか遠くを移すかの如く、儚げで透明で
曇りを知らない。
其れなのに今、目の前に居る彼はどうしてこうも
光と影が満ちいっているのだろうか、とセブルスはそっと思った。



廊下の突き当たり、今2人がたっているその階段の
踊り場の横にある、小さくて丸いステンドグラスから差し込む
光がの黒い髪に吸い込まれていくような錯覚が妙にリアルだった。


「また解らない事があったらいつでも聞け。」

セブルスがまた独り言のようにポツリと呟いて、
グリフィンドールとは反対の階段を上っていった。
はその遠ざかっていく背中を見つめると
自分も寮へ戻る為に階段を上り始めた。















がグリフィンドールの談話室に入ると
疎らながらも数人の生徒が居た。
は手に抱えた羊皮紙が落ちないように注意しながら、
“彼等”が居ないかどうか目を走らせた。
そして、居ない事を願った。


しかし、そんな期待とは裏腹に、から少し離れた場所に、
“彼等”、そう、ジェームズ・ポッターとリーマス・J・ルーピン
が居たのだ。
シリウス・ブラックが居ない分まだましだが、
体が自然に拒絶の体制に入ってる。
が2人に気付いたように、二人もに気付いた。
しばらく3人は見詰め合ったが、ジェームズが何か言おうと
椅子から立ち上がった瞬間、は思い切り目を反らし、
自分の部屋へ向う為、階段を駆け上っていった。

そのまま自室に駆け込むと、は羊皮紙を床に投げ落とし、
その流れのままベッドに倒れこんだ。
その反動でベッドサイドの机からいくつか物が落ちたが
今はそんなことを気にしている余裕は無かった。



「・・・なんで・・・」


は小さく呟く。
そしてきつく目を閉じ、握り締めた両手に顔を埋めた。

「・・どうして・・」


ガタガタと小さく震える自分の体に苛立ちを覚えつつも、
如何しようもない恐怖感はぬぐいきれない。



どうして自分はあんなにも彼等を恐れるのだろう。
シリウス・ブラックに対する恐怖感は解ってる。
でも、何故リーマスやジェームズまで?
彼等はこの時代に来た僕に優しく接してくれた。
リーマスはあんなに優しそうな青年なのに。


何で・・・・・ハリーの父親まで恐れるんだろう。
自分は・・・


今では酷くちっぽけだ。
ハリー達といた頃感じていたあの心地良い感覚はまったくない。
自分の存在が、酷くちっぽけに思えて仕方ない。
なぜだろう。


一人しか使っていない部屋はやけに広く感じた。





















其の日はとても天気が良かった。








「ジェームズ…」

が走り去った後、
ジェームズはしばらくの自室のあるあたりを
眉間にしわを寄せて見つめていた。

リーマスは苦々しく顔をしかめると
力なく椅子に腰掛けるジェームズを見つめ、
それからジェームズがしたように
の自室のあるあたりに視線を向けた。


「なぁ、リーマス。何ではあそこまで僕達を避けるんだろう?」
「…ジェームズ…」

ジェームズは机の上に散らばった
いたずら計画の羊皮紙を見つめていたが、
その視線はそこを通り越してどこか遠くを見ていた。


ジェームズとリーマスは気づいていた。


あの日、
大広間でがシリウスに殴られてからというもの
は笑顔を見せなくなった。
否、元からあまり笑顔は見せなかったのだが
雰囲気が堅くなって自分の周りに壁を創ってしまった。

周りの人間はシリウスや他の人間の反応が怖くて
誰一人としてに話しかける者がいなくなり、
が孤立してしまっている。

ジェームズはそれを知っていて
何も出来ない自分に腹立たしさを感じていた。

悔しそうにうつむくジェームズを見て、
リーマスも悔しそうに目を伏せた。




その時、談話室の扉を開けて、
その問題の引き金になっていたシリウスが帰ってきた。


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訳のわからない恐怖感。
一応書いておきますが、私はシリウス嫌いじゃありませんよ!!