僕は、
一人になるしかない。











alone.















!!」







視線の集まる大広間から出て、
石で出来た古くて長い廊下を通る。




冷たくて、ひんやりとした空気が
なんだか心地良かった。












グリフィンドールの扉絵をくぐり、
は着いて来るジェームズを振り返る事無く
部屋へ入ろうと階段に足を乗せる。




そんなに、ジェームズは息を切らして追いつくと、
左腕を掴んで引き止めた。







・・さっきの・・・ 
 シリウスのこと、気にしなくていいから・・・」







「アイツ・・何だか警戒心が、
 強いらしくて・・・」




はぁ、と少し深呼吸をして
ジェームズは途切れながら云った。





其の言葉にも、
はジェームズを見ることも無く、
ただ、耳を傾ける
そんな感じだった。









誰も居ない談話室に、
ジェームズの言葉は良く響く。





心地良いくらいに、

心地悪いくらいに。












はしばらく黙っていたが、
ジェームズに掴まれている左手を軽く引く。
ジェームズはゆっくり手を離すと、
はほんの少し首を動かし、
ジェームズの方に軽く動かすと







「・・・しばらく・・・一人になりたい。」






小さく

小さく呟いた。



其の声は、
ジェームズにも良くわかるほど
頼りないような、今すぐにでも消えてしまいそうなほど
か細かった。






ジェームズは何か言葉を発しようと口を開きかけたが、
なんと言葉を掛けていいのかわからず、
小さくごめん、と呟くと
の後姿から視線を逸らした。





は少し俯き加減に、階段に乗せている足を動かし
部屋へと、向っていく。






やがて、パタン、と
部屋の扉が閉まる音がして
ジェームズは一人になった。








「・・・・・・」



ジェームズは眉根に皺を寄せ
の部屋の有るあたりを見つめると、
再び大広間へと姿を消した。
















パチパチと暖炉の中で木が燃える音だけが、
誰も居なくなった談話室を包んでいた。

































は部屋に戻るとそのまま
力無く、仰向けでベッドに倒れこんだ。




何もする気になれず、
何ともいえない重たい気だるさが
体中をグルグルと渦を巻くみたいに廻ってる。



皹の入った天井を見つめ、
さっきまでジェームズにつかまれていた左手で
目を覆うと、大広間での事が鮮明に思い起こされた。




口の中が鉄臭い味でぬるぬるする。


それは、シリウスに殴られた頬の内側
からの出血を示すモノだった。











何故、彼は自分を嫌うのか。

何故、彼の事が怖いと感じてしまうのか。




此処より未来の世界、
彼は『殺人犯 シリウス・ブラック』として
名がしれるようになる。



彼の友人である、

ポッター夫妻を殺して――。







ハリーの額に、あの痛々しい傷をつけたのも彼だ。







恐らく。



ヴォルデモートの臣下に付く彼は、
今からヴォルデモートを崇拝しているのだろうか。







此処より未来で聞いた話は、
あまりにもおぞましいモノ、で。








その恐怖が、彼を目の前にすると
身体支配する。





































は目を覆っていた左手で、
シリウスに思い切りつかまれた右腕の
袖をまくった。


其処には、くっきりと指の跡が残っていた。





真っ赤に、少し紫色を移しこんで。




「・・・これ・・・アザになるな・・・」




其の赤く腫れた腕を見ていると、
とてもやるせない気持ちになった。






やはり、自分は一人で居るべきだろうか。

この時代に戻った今は、

未来の方が自分にとって幸せな世界だったと
いえる自信さえ、ある。






一人で、居るべきなのだ。















心の中で、絶望にも似たカンジョウが
大きく膨張していた。














は、赤く腫れた腕を投げ出す。


その反動で、ベッドサイドに有る
テーブルからコトリ、と写真立てが地面の落ちた。



は其れを横目で見ていた。



そして、ぎゅっと目を閉じると
そのまま、眠りに無理やりついた。















写真立には、

“彼等”が、微笑んでいた。


此処より、未来に居る彼等。



自分が、幸せだと言った、
あの時間のまま。











その夜、夢を見た。


ハリー達と、楽しく幸せに過ごしていた
あの時の夢、を。












カーテンを閉めなかった部屋に、
暗闇の中で輝きを放つ、
ぽっかりと、の心と同じように欠けた三日月の
光が、真直ぐ部屋に差し込んできていた。







NEXT


今のところ連載アンケートで第一位の
この夢。
やっぱり、多人数を書くのは疲れますね・・・