この世界にもどって、
君が苦手になった。




independence.















ざわつく談話室。
それぞれが友人と話をしたりしている。
だけど、自分の隣や周りには
人が居なかった。





はこの時代に戻ってから
常に行動を共にする親しい友人達をつくれずに居た。

声を掛けてくれる者なら沢山いたが、
何処からきたのか、どうしてこんな時期に編入なんかしたのか、
など、同じような質問に
最初は丁寧に応えていただが
徐々に疲れてきていい加減に応えるようになってしまった。


それに加え、
この時期の編入となると
例え親しい友人が出来ても
彼等の話には全くついて行けず、
どうやっても一人になってしまう。



は、卒業まであと数ヶ月の間
一人で居ようと心に決めてしまっていた。







「やぁ、!そろそろ夕食の時間だよ!!」


そんなある日。
夕食の時間になり、
人数の関係で一人部屋を使っているが、
大広間に向うざわめきが収まってから一人、降りてくると
声を掛けてきた人物が居た。

それは、がこの世界に戻ってから
恐らく一番会話をし、
この世界に戻る前、一番親しかった“彼”にそっくりな


ジェームズ・ポッターで。


ジェームズはに一緒に夕食に行こう、
と誘いを掛けたのだった。


はそのジェームズの笑顔を見て、
少し心が軽くなった気がしていた。



嬉しかった、のかもしれない。







「やぁ、リリーvvそれに皆、待たせたね!」

「あら、ジェームズ。遅かったわね?」


大広間につくと、
ジェームズはの腕を掴み、
長い、栗色に紅みがさした髪の少女の元へグイグイと引っ張っていった。
そして、テーブルの前に立つと、
リーマス、ピーター、そしてシリウスに
ニコリ、と笑いかけて




を待っていたんだ。」




そう言い放った。

は其の言葉に正直驚いて、
さほど身長の変わらないジェームズを見る。


どうやら驚いているのはだけではないらしく、
リーマス、ピーター、シリウスもジェームズを見ていた。



「・・・
 あぁ、ジェームズが良く話題にしていたのは貴方だったのね?」


そんな中、
栗色の髪の少女が微笑みながらに声を掛けた。
ジェームズはニコニコとその少女の隣に腰掛け、
も座るように促した。

はジェームズの隣、
シリウスの前に座る。


其の一瞬シリウスと目が合ったが、
は“あの記憶”が頭から離れず、
目を逸らした。



シリウスは其の後も、を監視するように見ていたけれど。




、紹介するよ。
 僕の彼女のリリーだ。」

「よろしく、。」


リリーはジェームズに紹介されると
に向って手を差し出した。
は其の手を数秒見つめると


・・・よろしく。」


小さく呟いてから握手を交わした。
それからジェームズに目をやり、



「話・・・ってなんの話をしたんだ?」



訝しげに首を傾げて見せた。


ジェームズは一瞬ぽかんとした表情をした後
あぁ、と手を打つとに笑いかけた。




「編入生のって
 何となく僕と似てるよねって言う話をしてたんだ。」



「・・・僕と・・君が?」



少し、胸の奥で何かがチクリと痛んだ。




其の笑顔が“彼”と重なるから。



「そうだよね、言われてみれば君とジェームズって
 よく似てるよね。
 始めてみた時は青ざめてて良く分からなかったけど。」



シリウスの隣でパンを頬張っていたリーマスが
ふと声を出した。
彼特有の甘い声、と言うのだろうか。
優しいけれど、どこか悲しみを含んだ声。

は其の声に目を細めてリーマスを見た。


「あ、別にジェームズみたいに間抜けな顔って言ってるわけじゃないから。」



クスクス、とリーマスは笑う。
何だか、心地の良い笑い方。

は自然と口元が緩むのが解った。



「そうかな・・。
 ジェームズに似てる・・かな。」


は緩んでしまった顔を見られるのが恥ずかしくて
俯いて応えた。

其の気持ちは、
大切な彼らと離れてから久しぶりに感じる物で。

心に、ゆとりが広がる。



「ぼ、僕、の瞳が凄く綺麗だと思った。」



今度はリーマスの隣に座っていた
ピーターがおどおどと声を出す。
がピーターに視線を移すと、
一瞬、ピーターは顔を紅くした。・・・ように見えた。



「僕の・・・瞳?」



はフォークでベーコンを突くと、
ピーターをもう一度見る。

ピーターは大きく縦に首を振った。



「空みたいな色・・・
 同じ蒼でも其処まで澄んでる瞳、初めて見たから。」




ピーターは精一杯だったのか、
顔を少し赤らめるとはにかむように微笑んだ。

それから自分の皿にオートミールをのせる。



は初めて言われた瞳の事について、
少し、照れくさいような気持ちになり
小さく微笑んだ。





それは、あまりにも小さな物だから。



隣に居るジェームズさえ、気が付かないほど。







只、一人を抜かしては。









「おい、お前何者なんだ」

が目の前に山積みになっているパンを取ろうと
手を伸ばした、まさにその時。

の目の前に座っていて、
が来てからは一言も喋らなかったシリウスが
重々しく口を開いた。



はその腕を止め、
視線をシリウスに移す。



自分を、じっとにらめつけるシリウスが其処にいた。




「・・・・・。」




何となく、厭な汗が出る。
この眼、とても苦手だ。


彼が何を思ってるか、
大体は考えが付く。



怪しんでいるのだろう、こんな時期に編入してきた自分を。









は目を逸らすと
手を引っ込めようとした。




だが、其の腕はシリウスに掴まれてしまった。





「・・・離してくれないか?」



は目を細めてシリウスに掴まれている腕の部分と
シリウスを交互に見た。
シリウスは眉間に皺を寄せると
グッと手に力をこめる。


その痛さに、は微かに身を引いた。




「俺の質問に答えたら離してやるよ」



痛そうに身を引くを楽しむかのように
シリウスは徐々に力をこめつづける。



は唇を噛締めると



「僕は、この学校に編入しただけだ。」


小さく、消え入りそうな声で応える。
其の声は震えていた。




「シリウス!何やってるんだ!」


の隣でジェームズが
シリウスの腕に手を乗せる。
シリウスは一瞬ジェームズを見たが、
またすぐにに射るような視線を戻した。


「シリウス!」

リーマスも、其の手を取ろうとする。
だが、シリウスは椅子から立ち上がり、
の腕をグイと引き上げた。


「応えろ。」




大広間が静かになったのも関らず、
シリウスはを離そうとはしなかった。


運がいいのか悪いのか。


この時教師はほとんど大広間にいなかった。






「・・・・・」



は唇を噛締めただけで
何も言わなかった。


シリウスはそのの姿にとうとう切れたのか、
胸倉を掴んで引き寄せると
開いた片方の手で思い切りの頬を殴った。



「シリウス!!!」





ドン、という重い音と共に
は地面に倒れこんだ。

ジェームズは慌ててを起こすと、
シリウスに向って首を横に振った。




シリウスはそんなを見下ろし、
リーマスはシリウスの隣で、
又殴りかかろうとするシリウスの腕を抑えていた。





「どうしてだ、シリウス。
 が何かしたのか?」




ジェームズはシリウスに視線を合わせると
睨むように、目を細めた。

シリウスはジェームズの視線から逃れるように、
隣に立っているを見る。




「・・・・」




互いに、何も言わずに睨みあった。








は一瞬口を開いたが、
言葉は発せられず、悔しそうに顔を背けると
そのまま大広間から出て行く。







ジェームズはシリウスをしばらく見つめた後、
リリーに
「すぐ戻るから」
と告げ、の後を追いかけていった。







「シリウスらしくない・・何かあったの?」


リーマスはシリウスを椅子に座らせると
ざわめきの戻った大広間の様子をうかがった。


シリウスは、只黙って
が出て行った後をじっと見ていた。





next


大波乱。