俺の
本当に居るべき世界。
nostalgie.
見上げれば真青な大空。
今日はクィディッチ日和だ、
思わず呟きそうになるほど天気が良かった。
「・・・何でだよ・・・」
何処までも透けるような青空とは裏腹に、
心の奥は暗い、大きな暗幕が覆ったように
冷く。
孤独すぎる部屋の中。
ハリーとロンが同じ部屋だった、あの部屋と
全く同じ部屋なのに。
雰囲気は違うし、
自分の知ってる世界じゃない。
そして
そこに居て欲しい人達が居ない。
「ハリー・・・ロン・・・ハーマイオニー・・・」
目を閉じて、
溢れる何かを止めようと膝を抱く。
其処に顔を埋めて窓に寄りかかっても
温かいのは日に当る背中の一部だけ。
あの頃、ハリー達と見上げたあの空は
冷たくなった心をも温かくしてくれたのに。
「・・・どうして・・・」
どうして、
こんなにも心が冷たいのだろう?
まるで、氷の中に閉じ込められたみたいだ。
「・・・どうしてだよ・・・」
どうして僕が?
せっかく出来た友達は居なくなって。
否、
居なくなったんじゃなくて
自分が引き離されたのか?
一体何に?
この世界か。
この運命か。
そんな物・・・いらない。
俺に、あの幸せだった日々を返して―――――――・・・・
「――――。」
孤独に苛まれて、どの位たった頃か。
自分ひとりしか居ない筈の部屋に、
もう一つの声が響いた。
はビクリ、として顔を上げる。
其処には
「・・・ダンブルドア・・・先生・・。」
優しい微笑みに、何本もの深い皺を刻んだ
ダンブルドアが居た。
「辛いかの?。」
「・・・・はい・・・」
何故か、ダンブルドアだけが
時間の流れに流されていないようで。
周りの空気とか、雰囲気が変わってしまっても
彼が居てくれるなら、この雰囲気は厭な物にはならないだろう、
そんな安堵感が一瞬心をよぎる。
「君がとても混乱している事は良く分かる。
しかし・・・此処に来てしまったからには思い出してもらわなければならない
事・・・・、君にとってかなり酷な物といえるじゃろうが・・・」
窓から入り込んだ光が、
微かに彼の顔に影をつける。
其れが、何だかリアルに感じてしまい、
妙な不安に刈られた。
「俺・・僕が・・・忘れてる事・・・ですか・・・」
は抱えていた膝を下ろし、
床の上に立つと、少し残っていた涙をぐぃ、とふき取る。
そして、ダンブルドアを見上げた。
「思い出さなきゃいけない事ですね・・・。」
が小さく呟くと、
ダンブルドアの眼鏡の向こうの瞳が、
微かに細められた。
「そうじゃ・・・。よく聞くのじゃ。
今、此処で思い出すことを拒んでも・・・君の為にはならんじゃろう。」
「・・・・」
は黙ってダンブルドアを見つめる。
其の蒼い瞳に、
決意の色が見受けられた。
「・・・・宜しい。
、目を閉じなさい。」
ダンブルドアが呟くのと同時に、
は静に下を向き、窓に背を預ける形で
目をゆっくり閉じていた。
ダンブルドアの杖が、
の額に添えられる―――――――
・・・・―――――――――――――
「、時間よ。
学校に遅刻するわ。早く起きなさい。」
「うん・・・オハヨ、母さん。父さん・・・」
「あぁ、おはよう。。」
――あぁ、この光景。
ずっと俺は忘れていたのか。
朝になれば、いつも繰り返されるこの光景。
俺は髪も梳かさず、制服のネクタイもダルク締め、
そして朝食の席に座る。
父さんはいつもぴしっとした格好で、新聞を読んでた。
母さんは、夜遅くまでTVを見てるから寝坊するんだ、と
苦笑いしながらトーストを渡してくれて。
俺はこの頃、まだ魔法の世界なんかしらなかっんだ――――
「・・・・逃げ・・・ろ・・・」
「?!父さん・・どうしたんだ!母さんは?それに
この傷・・・・・」
「今・・・は説明している暇は無い・・・は・・やく・・逃げろ・・・
”やつら”に・・・居場所が知れた・・・」
「父さん!!!やつらって?!何があったんだ・・・・!!」
―――はっきりと蘇る、記憶。
そうだ、この時・・・
あたり一面真っ黒な世界。
確か、星が良く見える、綺麗な夜空だった気がする。
其の日に限って、父さんの帰りは遅くて。
俺は明日テストがあるから、と言って部屋に居たんだ。
そしたら、母さんの悲鳴が聞こえて・・・・
階段を駆け下りて、目にした光景。
母さんは真っ赤に染まっていて、
父さんは其の母さんを庇うように床に這いつくばっていて
30cm位の棒・・・杖を持っていた。
そして俺を見て「逃げろ」
そう叫んだ。
俺は訳がわからなくて、只うろたえる事しか出来なくて。
そしたら肩に、何か重圧感を感じた。
無意識のうちに振り返ろうとした、
其の瞬間、父さんが呪文を叫んで・・・・・・
黄色い光を見た。
足元が沼のように沈んでいって。
父さんも、母さんも見えなくなって。
俺は、この人の前で倒れていた。
そして知る。
母さんはあの時もうすでに事切れていて
父さんは俺を助ける為に最後の力を使い・・・
死んだ、と――――。
記憶が見えなくなって
はゆっくり目を開けた。
其の先には、目を閉じる前よりも
優しい顔つきをしたダンブルドアがいて。
そして、温かい液体が頬を伝っている事を感じた。
「僕は・・・もともと・・・この時代の人間だったんですね。
只、魔法を知らず、普通の学校に通ってた。
僕の両親は“何者”かに狙われてて・・・
殺されたんだ。
そして僕は・・・安全な世界、未来へと飛ばされた・・・そして今、
僕はまた引き戻された・・・。」
淡々と語る口調。
微かな震えを含む其の口調に
ダンブルドアは顔を僅かに顰めた。
「・・・辛い思いをさせてしまったの・・。
そうじゃ・・。君の両親は、此処、ホグワーツの主席じゃった。
君の両親は、この世界を闇に陥れていた闇の魔法使い
“ヴォルデモート”にとっては邪魔な存在じゃったんじゃ・・・。
それが・・・どういう意味か、分かるかの?」
優しい声色に、
はコクン、と頷いてみせる。
“どういうことか”とはつまり、
“始末の対象”・・・そういうこと。
「しかし・・・君にはまだ、彼らに狙われる理由がひとつだけある。
君自身が、秘めている事じゃ。」
は、その言葉にゆっくりと顔を上げる。
ダンブルドアの瞳は何処までも澄み、
何もかも見透かすような、そんな光を持っていた。
「それは・・・一体なんですか・・・?」
不安そうに尋ねるに、
ダンブルドアは静に首を横に振る。
まるで、そうすることが自然のように。
「今は・・・まだ知らん方がいい。
いつか・・・近い未来に、自身が知ることになる。」
「僕自身・・・・」
青く澄み切った空は、
何時しかオレンジ色の衣を供えて。
遠くに見える湖は
静に光を反射していた。
「では、時期はずれじゃが、転入生を向かえる事になった。
寮はすでに決っておる。
グリフィンドールじゃ。皆、仲良くするように。」
わぁぁ、と沸き立つグリフィンドールのテーブル。
其処に一人、漆黒の髪を持ち、
空を吸い取ったように蒼い瞳を持つ少年が迎え入れられた。
彼の隣、
周りには先程であった少年達がいて。
「やぁ、!君は転入生だったんだね?
同じ寮って事だし、仲良くしようじゃないか!!」
は、静に微笑を漏らした。
――――――ハリー、ロン、ハーマイオニー。
俺はこっちの世界に居るべき人間だから・・・
俺はもう、この姿で戻る事は出来ないけれど・・・
未来、君達に会えることを楽しみにしているよ。
だから・・・・
今はサヨウナラ。
next.
こういう話です。(何。)
このシーンはだいぶ前からあっためてきていました。
この話自体、だいぶ前から有るので
これから先、どう進んでいくのか楽しみにしていてくださると
嬉しいです。