風化-10-
-The beginning of another story.-
時計を見れば、もう10時を回っていた。
カーテンを割って入ってくる光は淡いモノではなく
俗に云う、“朝陽”が昇って大分時間が経ったような
そんな光。
はベットの中でそのカーテンの間を見つめていた。
今日は木曜日。
普段ならもう2時間目の途中の時間帯。
木曜日の2時間目はたしか数学だった。
しかも教科担任は竜崎先生。
昔なら関係は無かったテニス部の顧問。
でも今は一応マネージャーとしての在籍になるのだから
どうしようかと考えた。
それに、マネージャーの自分が休んでしまい、
部員達が雑用をしなくてはいけない。
マネージャーが一人いないだけで
部活の練習に打ち込める時間が減るのだ。
今はテスト期間中で部活が無いのが幸いだけど。
学校を休めばそれなりに支障が出る。
例えば休んだ分の授業分がわからなかったり
まちまちだが。
身体の具合が悪いのなら
無理をして出て行ったところで授業に集中できないし
保健室送りにされて早退させられるのがオチだ。
しかし、それはあくまでも身体の具合が悪い時のことであって
正直言うと、自分は具合が悪いわけでもないし
生理痛があるとかそんなんじゃなかった。
むしろ体調はいいほうだ。
つまり、簡単にいえばサボった事になる。
今までいい子ぶってきたわけじゃないけど
サボったりする事なんか無かった。
サボっても自分に利点が無かっただけで。
そのお陰で成績はまぁまぁだったし
先生受けも良かった。
でも、最近はどうしてもサボりたくなる事が多かった。
昨日のこともあるし
学校には行きたくない。特に部活には。
どんな顔をしてあえばいいのだろう。
別に、そんな対したことは無かった。
解ってる。
彼にとって、元彼女と話をするのは全然何でもないことのはずだ。
だって、今彼の傍には恋人がいるし
お互い好きあっていてその間を分かつ物は何も無い。
でも、アタシは違う。
いまだに好きで好きでしょうがない。
未練がましい女だって思われても仕方ない。
だって好きなんだから。凄く、愛してたんだから。
いきなり、忘れられるはずが無かった。
少し話しただけでも
顔を見ただけでも
酷く涙が出そうになる事は、罪なんだろうか。
いっそ、心が壊れてしまえば苦しい思いをせずにすむのに。
そう思ったら、からしたはずの涙が溢れて
頬を伝って枕に染みを創った。
あの後、ひとしきり泣いてそのまま寝てしまった。
目を開けたらもう夕方色の光が部屋に入ってきていて。
時計を見れば4時を指していた。
流石にお腹もすいて、何か食べようと部屋から出る。
家の中には誰もいなくて
昨日からまだ両親が帰ってきていないことが解る。
もう、なれたことだから良いけど。
その時、ポケットに入れた携帯から着信音が流れた。
『.....♪〜..♪』
慌ててポケットから携帯を出すと
まず初めにインスピレーションウインドウを見た。
其処に表示されたのは、昨日電話をかけてきた彼ではなく
先日アドレスと電話番号を教えた大石だった。
教えたのは大石だけでなくメンバー全員に教えたのだけど。
やはり、昨日のことがきいていて
ナーバスになっているな、なんて思いながら
自嘲的な笑顔を浮べて通話ボタンを押して耳にあてた。
「もしもし、大石くん?」
『あ、?今日学校や休んだって聞いたから心配したんだ。
風邪?』
何だか、大石らしい質問に
は小さく笑いを零した。
もちろん相手には聞こえないように、笑顔にだけとどめていた。
「うん、風邪じゃないんだけど・・体調崩しちゃって。
でも大丈夫だよ」
少し嘘をついた。
何処も悪い所なんか無い。
ただ、気分が乗らなかっただけ。
『そうか・・あんまり無茶するなよ。
にはマネージャーで慣れてないことばかりさせたからな。
多分疲れが溜まってたんだと思う。』
「大石君・・・」
電話の向こうで
大石が心配そうにする気配を感じた。
それが何だか嬉しくて、同時に
まだマネージャーになったばかりなのに
仲間として心配してくれてるんだという事を思って
傷ついた心が癒されていく感じがした。
『ん?』
「有難う。心配してくれて。」
『ははは、心配するのは当たり前だよ。
じゃぁ、また元気に学校であおう』
「うん。じゃぁ・・」
とても暖かい気分で電話を切った。
自然と顔が綻ぶ。
『...♪〜♪..』
電話を切ってすぐメールを着信する曲が流れた。
インスピレーションウインドウに表示されたのは
メールが一通だけではないということだった。
--FROM 英二
--Subject 大丈夫かにゃ?
-------------------
、大丈夫か〜?
今日がいなくて寂しかった!
早く元気になってね^^
--END--
--FROM 桃城
--Subject 大丈夫っすか?
-------------------
先輩食べ過ぎて休んだんですか?
あまり食べすぎはよくねぇな、よくねぇよ。
って事で、早くよくなってくださいね!
--END--
「食べ過ぎなんて・・・桃城じゃないんだから」
ふふ、と言葉と笑いが出る。
--FROM 海堂
--Subject 無題
-------------------
早く元気になってください。
--END--
「淡白だなぁ・・」
--FROM 乾
--Subject 無題
-------------------
体調不良か。
俺のドリンクを飲めば早く治るぞ。
どうだ、持っていってやろうか?
--END--
「えー、いらないなぁ・・・」
あの変な液体の恐怖は聞いた事有るから。
--FROM 越前
--Subject っス。
-------------------
どうせ夜遅くまでTVみてたんでしょ。
先輩もまだまだだね。
--END--
--FROM タカさん
--Subject 大丈夫?
-------------------
何か食べる元気があれば
お寿司を持ってくけど・・・どうだい?
--END--
「お寿司かぁ〜」
小さく笑った。
微笑がこぼれる。
何だか、皆からの言葉が凄く嬉しかった。
ただ、2人からメールは来なかった。
そのことは今の、この幸せな感じで忘れていたから
どうでも良かった。
寂しい家の中、なんだか寂しくなかった。
何とかやっていけそうな気がした。
アタシはその日、着信音を変えて
昨日の着信記録を消した。
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