風化-04-
-The beginning of another story.-













ガラッと、
後ろのドアが開く音が耳に届いた。







「あれ・・・っ」






そして聞こえる、
誰かの驚いた声。



「・・・っ!!」





その誰かの声で
悲しさ、悔しさでぼぅっとしていた頭が
一気に覚醒した。


何、やってんのアタシ。









頭がすっきりと鮮明になってきた、

そう思った瞬間、
身体は上に圧し掛かっていた彼――不二周助
を思い切り突き飛ばしていた。






身体の上が軽くなった感覚。

それと同時に聞こえる誰かが
机にぶつかって倒れる耳障りな音。










「・・?!」




ヤダ

ヤダ。


どうして?
何で?

アタシはあの人とキスなんか。











「やっぱり、アンタって最悪だよ」






机の横にかけてあった鞄を掴み取り
唇を擦りながら、涙が出そうになる眼で
思い切り不二周助を睨んだ。


悔しくて
悔しくて。


馬鹿にされた気分とかじゃない。
もっと


ヤな気分。





!」




アタシはそのまま教室を飛び出た。

その時に誰かがアタシの名前を呼んだけど
涙でぼやけて見えなかった。



ぼやけて見えなかったけど、
あの癖っ毛で紅い髪の毛は
絶対に菊丸君だ。




それも最悪。


菊丸君に見られたなら
噂はきっとすぐに広がるだろう。





最悪。

































「・・・ったぁ・・」




慌しく出て行ったの後姿を見つめていた菊丸は
教室の中から聞こえたかすかなその声に、
その声のする方へ視線を向けた。



「・・いいところ、だったのに。
 邪魔してくれたね、英二。」


「・・・不二・・」




そこには、
彼女に突き飛ばされたままで、
倒れた机の横に笑顔で座り込む不二がいて。



不二は、油断したかなぁ、
とかポツリと呟くと
立ち上がって制服についた埃とか払った。




「なぁ、不二・・とできてんのかよ?」


「何で?」



不二は、菊丸からの質問に
笑顔でそう返すと倒れた机を立ち上げ、
飛び出した教科書を拾うと
その机の中へ入れていった。



「だって・・・あんな場面見たら」



菊丸はソコまで言うと
何となく気まずくなって俯いた。
それからクシャッと髪の毛を掻くと
自分の机のところへ脚を運んだ。


かたっと机の上に鞄を置くと、
隣の席の不二が可笑しそうにクスクス笑う声がした。




「別に?付き合っては無いよ。」



その声に驚いて彼の顔を見れば
綺麗に微笑んだカオ。

表面だけの微笑み。




人の不幸を楽しむような

そんな微笑。




「・・・不二っ・・は手塚の・・」




ガタッ



「・・・っ」





“手塚の”

その言葉を発した途端
学ランの胸倉をつかまれる。


目の前には、うっすらと目を開けた不二がいて。



ギリギリと首が絞まる音がした。




「ふっ・・・じ・・っ」



痛くて
苦しくて

不二の手を解こうともがいてみるけど

そんなの、全然叶わないくらい
いつもの不二からは想像もできないような力で
首を締め上げてくる。



ヤバイ。



落ちる。











「・・・ぅっ」



ぎゅっと目を閉じた瞬間
首の圧迫感は消えた。


「・・がはっ、げほっ・・」


其れと同時に倒れこんで
壮大にむせ返る。



ぼんやりとする頭で
目の前の人物を見上げた。

不二は、あの表情のまま
俺を見下ろしてた。





「五月蝿いよ・・英二。」



その、蒼い瞳が
とても冷たく見えて。
いつもの微笑とかじゃなくて・・。



「不二・・っ、お前変だよ・・」





涙が出そうだった。





「変?英二、君こそ可笑しくなったんじゃないの?」



「・・・・」



「英二だって、さん・・・のことが好きだったんでしょ?」



「・・・っ、何でそれ知って・・・」



「手塚の隣にいたのこと
 何時も見てたでしょ?凄い優しい目でさ。
 それに、僕が気付かないとでも思った?」



クスクスと、可笑しそうに笑う不二。


嗚呼、嗚呼。



何で。



どうして。





「手塚は彼女を捨てたんだ。
 傷ついた彼女を見捨てられるほど僕は酷い人間じゃないよ。」





「・・・不二・・・」




菊丸は表情を強張らせた。

何ともいえないこの位置。
何故か心の奥から冷たい何かが湧き上がる。












彼女を

を守らなくては。

このままでは

彼女は

ボロボロになってしまう。


















菊丸がそう思ったのと同時に
教室には沢山の人が入ってきて
菊丸は教室を飛び出した。

そして
学校の始まりを告げるチャイムが
無機質に鳴り響いた。


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